近畿大学 農学部 水産学科 農学研究科 アグリ技術革新研究所 石橋 泰典先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

養殖技術に革新!未来の食料生産モデル開発へ

近畿大学 農学部 水産学科,大学院 農学研究科,アグリ技術革新研究所 教授
石橋 泰典 先生


クロマグロなどの種苗を量産化

魚介類を卵から稚魚まで育てる「種苗生産技術」の改善や陸上での「閉鎖循環型養殖」のシステム開発、将来の食料生産に向けた魚介類、海藻、野菜等の「動植物複合生産モデル」の開発を行っています。
現在の養殖技術でも、クロマグロ、ウナギ、クエなどのように、種苗を大量に生産することが難しい魚種が複数あります。クロマグロやクエは本学の水産研究所と共同し、光の波長や照度などの光環境を制御して生産効率を高める技術を開発しています。紫外線は魚にも有害ですが、小さな仔魚の多くはプランクトンから反射される紫外線を視認することができ、適量の照射であればクロマグロやクエの摂餌に有効であることが分かってきました。一方で、ウナギは卵から稚魚になるまでの飼育期間が長く、他種よりも生産がかなり難しいです。こちらは、国立の水産研究・教育機構と共同で、生産効率を高めるための開発を行っています。
農学部の奈良キャンパスでは、海がないので人工海水を使いますが、同時に海洋の病原体もほとんど存在しません。このため、卵や仔魚を研究所等から送ってもらい、消毒して実験を開始することで、海洋の病原体がほとんどいない条件下で安定した生産モデルの開発が行えます。研究がうまくいった時には本学の水産研究所などに出向き、大型の生産施設を使って量産化に挑みます。このような手法で、今までにクロマグロ等の種苗量産化に直接役立つ技術開発に多数成功しました。

陸上水槽で環境を制御し、魚の成長を最大に

海でよく見られる「網生簀(あみいけす)養殖」は、小割生簀を海や湖などに浮かべ、その網の中で魚を養殖する方法で70年ほど前に近畿大学で開発されたものですが、自然の中で行うため、環境の制御が難しいことなどが課題となっています。そこで、最近では陸上水槽で飼育水を循環して使う「閉鎖循環型養殖」の技術も研究しています。
魚類は変温動物であるため、自然界では水温変化の影響を受け、季節によって成長速度が変わります。しかし、陸上養殖では通年で最適な水温に調整できるため、最大成長が得られるわけです。また、硬骨魚類の体浸透圧は、哺乳類と同じような値を維持しています。淡水や海水の中では、体内と環境水との間で塩類や水分が移動するため、硬骨魚類は多大なエネルギーを使って浸透圧を調整しています。一方、陸上養殖では体浸透圧に近い汽水で飼育することができ、多くの魚種は浸透圧調節のエネルギーが節約されて成長や生残が優れるようになります。このように、陸上養殖では水温、塩分、光などの様々な環境をコントロールすることが可能です。

廃棄物から動植物を持続的に生産する

また、将来の食料生産に向けて、魚介類、海藻、野菜等の動植物複合生産モデルの開発も行っています。魚介類を飼育し、その排泄物を濾過槽のバクテリアで分解して、アンモニアなどを、淡水魚の場合は野菜に、海産魚の場合は海藻に吸収してもらいます。排泄物が吸収されてきれいになった飼育水は、再び飼育水槽に戻されるため、魚介類と野菜や海藻が同時に生産されます。また、魚介類の餌には、生ごみ・廃棄物等から生産した昆虫を使うことも検討しています。つまり、生ごみ・廃棄物⇒昆虫⇒魚介類⇒野菜・海藻⇒生ごみ・廃棄物と言った食料生産のループモデルを作ろうと研究を続けています。この方法で作った野菜や海藻は当然ながら農薬を使いませんし、植物は動物の排泄物で作った有機栽培になります。これをいかに効率的に実生産に結び付けられるかを学生達とともに考え、様々な実験をしています。

突き詰めた自分の興味が世の中に役立つ喜び

私は子供の頃から生物が好きで、採集してきた魚介類を自宅で飼育していました。また、昔から家庭菜園にも興味があり、何度も栽培に挑戦しました。最も好きなことは今までにない新しい仕組みを考えて作ることで、幼少の頃からDIYが大好きで、いつも何かを考えて作っていました。そうした自分の興味が大学での研究に発展し、そのまま今の研究を進めるきっかけになりました。
自分が最も興味のあることを突き詰めて、世の中に役立つ実用的な生産方法を開発できるので、これほど面白いことはありません。自分がやりたいことに没頭できて、世の中に役立つことは、大きなやりがいとなっています。

石橋先生からのメッセージ

高校生の皆さんには、どの学部学科を目指そうかと悩む人も多いと思います。そのため、HPや情報誌で調べる事も多いかもしれませんが、実際に大学に来て実物を見て話を聞き、体感することで興味は大きく変わります。近畿大学の水産学科では、私のような生産技術開発を行っている先生が他にもたくさんいますが、それ以外にも鯨類の生態、ウナギ、他の様々な魚介類の生理生態、放流調査、漁業に役立つ行動解析、微生物と環境の保全、水産物の有効利用など、様々な研究に取組んでいます。毎年、8月と9月に水産学科の全教員と研究室の学生達が協力してオープンキャンパスを行っていますので、是非遊びに来て体感してほしいと思います。水産学科の面白さや魅力が分かりますし、刺激を受ければ、受験へのモチベーションにもなると思います。毎年、大好評でリピーターも多く混雑しますが、午後は比較的空いてきますので是非見に来てください。

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