タンパク質の一生
京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 教授
遠藤 斗志也 先生
タンパク質の社会
生き物が「生きている」という現象の主役は、タンパク質です。このタンパク質はアミノ酸がつながった高分子、つまり「物質」です。DNAという設計図によって作られたタンパク質は、十数万もの種類があり、それらが協力し合って細胞内で働いています。タンパク質については、次々にいろいろなことが解明されてきています。例えば、①タンパク質が生まれてから働けるようになるために、分子シャペロンという教育係のような別のタンパク質がいること、②それぞれのタンパク質は、核やミトコンドリアなど、どの場所で働くかが決まっていて、働くべき場所に正しく配送されること、③タンパク質のどこかがおかしくなったら、一度ばらばらにしてアミノ酸から組み立て直すしくみや、どこかを犠牲にしても細胞全体としては生き残れるようにするしくみがあること、などです。そしてその答えだけを見れば、どうやって解明したんだろうというようなものも、実はいろいろな方法を組み合わせて研究されているのです。様々な顕微鏡やX線を使用したり,NMRやクライオ電顕という手法を使ったり、遺伝子操作したり、ミトコンドリアを取り出して段階ごとに反応を止めてみたり……そうして得られた結果を全部組み合わせると1つのストーリーができます。細胞から取り出した個々のタンパク質ではなく、細胞の中にいるたくさんのタンパク質の様子について見たとき、タンパク質の働き方は私たちの人間社会によく似ていると思うんですよね。
生命の進化の素晴らしさ
現在、科学技術は発展していますが、ウイルス感染やサーバのダウン、大規模停電などが起こることがあり、システムとしてはまだ未熟なところもあります。複雑になればなるほどそれをうまく保つのは難しいんですよね。ところが細胞は、私たち社会の危機管理システムよりもずっとうまくできていて、壊れたところは捨てて他は生き残れるようになっていたり、ピンチになったら自分で解決できるようになっていたりするのです。そういった細胞のシステムは最初から完成していたわけではなく、生命が何十億年もの進化の間にいろいろなピンチを乗り越え、そのなかで、うまくいくものだけが生き残った結果たどり着いたもの、つまり、特別に素晴らしい十数万種類のタンパク質のコレクションが今日の生命を支えているということなのです。このように生きていない物質からどうやって生きている状態ができるのか、そのギャップがどう埋まるのか、そこから「生きている」ということが何を意味するのか、分子レベルで解明していきたいと思っています。「生きている」ことを支えるタンパク質って本当に素晴らしいし、本当に面白いなって思うんですよね。
遠藤先生からのメッセージ
とにかく楽しめることが大切。何かを不思議だと思ったら、なぜだろうと考えること、それを実際に自分で調べていくこと、その答えを探すのを楽しいと思うこと。例え失敗したとしても、それは次の仮説や戦略に繋がります。そしてだんだんと答えに近づいていくのは非常に面白いことです。今すぐ何かの役に立つものも大事だけれど、疑問を追求すること、それを楽しめることが大事なのだと思います。
京都産業大学 生命科学部
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/ls/
京都産業大学 遠藤 斗志也先生
https://www.kyoto-su.ac.jp/professors/ls/ls-a/endo-toshiya.html









