農学

どんな学問?

農業だけではない、幅広い研究対象

社会学のイメージ画像!私たちの生命維持に必要な「食糧」。農学では、昔からこのテーマを探求し続けてきました。現在、貧困や干ばつ、冷害などの天災により、食糧の供給が十分でない国があります。遠くない未来には、爆発的な人口増加によって世界中で食糧危機が起こるとも予想されています。そこで私たちは、食糧の生産性を高めていく必要があるのです。しかしその反面、化学肥料の大量使用で土地が枯れてしまうこともあるように、「環境」への影響も考えていかなくてはなりません。これからの社会にとって極めて重大な「食糧問題」と「環境問題」、それを様々な角度から考えていくのが、「農学」という学問です。
農学の研究領域は、この「食」と「環境」に分類できます。それぞれの分野を詳しく見ていきましょう。

1.「食」に関する分野

「食」は農学における主テーマであり、その内容も多岐にわたります。ここでは、さらに3つの分野に分けて各研究を紹介していきます。

● 食糧となる「作物」

効率よい食糧生産を目指して、「植物の生体機能」「病害の発生要因」「微生物との関連」など、植物個体を研究します。なかでもよく耳にする「遺伝子組換え技術」は、特定の栄養価が高い作物、病害に強い作物などの生産を可能にします。また、「旨味成分」「栄養価」「醸造」に関する研究など生産後の食糧についても研究されます。

● 作物の「生育環境」

植物の生長には、土・水・光・大気などたくさんの周辺環境が関わっています。例えば、「土壌学」では土の最適な固さ、土がどれだけの水を保持できるか、水に不純物が混じっていないかなどを研究します。「施設栽培学」はビニールハウスなどの栽培環境を意識したもので、温度・光・空気中の水分量などあらゆる環境条件を考え、その植物に合う最適な条件での栽培を目指します。

● 農業に関わる「経済」「流通」「政策」

ここでは「農業経済」「フードシステム」などがキーワードとなります。例えば、農家の経済状態の分析、その農家を支援して農村を活性化する政策、途上国への農業支援、安全で良質な食糧の流通システムなど、農業の発展に必要なことを学んでいきます。文系分野が多いことも特徴です。

この分野を学べる学科例

2.「環境」に関する分野

自然環境やそれに関わる環境問題を扱います。「緑地科学」「森林科学」「海洋環境科学」では、自然環境のもつ機能や、それを環境問題解決に応用する方法について研究されています。例えば、屋上緑化や壁面緑化で部屋の温度を下げてクーラーの使用を減らす、というのも身近な例ですね。また、「造園学」「ランドスケープ学」では、自然環境を活かした建築物の設計、都市における自然環境の配置などを研究します。石油資源の代わりとして、バイオマス(参照)の利用を考える研究もあります。

この分野を学べる学科例

その他、化学との関わりが深い「農業化学(農薬の開発など)」や工学部と関わりの深い「農業工学(農作ロボットの開発など)」、生物学分野の「生態学」「応用生物学」「生物工学」と協力して研究を進めていく分野、バイオテクノロジー技術を利用する分野などもあります。

こんな研究もあるよ

不可能の象徴とされていた「青いバラ」の誕生
——「バイオテクノロジー」

薬学のイメージ画像!現在、生物の遺伝情報であるゲノムの解析技術が飛躍的に進歩し、生物がもつ「遺伝子」のはたらきが盛んに研究されています。さらに、遺伝子組換え技術により、目的の生物が本来もたない性質をもたせることも可能になりました。園芸家の悲願とも言われていた「青いバラ」の開発もその一例です。花の色は色素の種類で決まります。遺伝子の組合せによって様々な種類の色素がつくられるため、私たちも様々な花の色を楽しむことができるのです。しかしながら、どのように栽培・交配を繰り返しても青いバラは得られませんでした。バラにはF3’5’H遺伝子が存在せず、デルフィニジンと呼ばれる青い色素の元になる物質がつくられないためです。
長い研究の末、パンジーから得た同遺伝子を、ある種のバラに組み込んだところ、青色の花をつけたバラが見事に得られ、今では一般にも販売されるようになったのです。さらにこの技術を応用し、同じく青い色素をつくる遺伝子をもたないキクについても、「青いキク」が開発され注目を集めています。バイオテクノロジーは、まさに「不可能」を「可能」にする技術と言えますね。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

農学に向いているのはどんな人?

A.

「食の安全を考えたい」「環境問題の解決に貢献したい」「最新のバイオテクノロジーに興味がある」など、「食」「環境」「生命」といったキーワードに興味があれば向いていると言えます。「自然」に興味がある人も向いているでしょう。また「化学」「生物学」「地学」を基盤とした学問なので、これらに興味をもっている、これらの技術を生活に役立たせたいと考えている人にもお勧めです。

Q.

農学部の受験科目について教えてください。

A.

学科によって様々です。私立の場合、基本的には理系科目で受験となりますが、なかには国語(現代文+古文)で受験できる大学・学科もあります。また農業経済関連の学科では、地歴や政治経済で受験できる場合もあるため、「文系だけど自然科学に興味がある」という人も受験できる可能性があります。受験科目をとってみても、農学で学ぶフィールドの広さが感じられます。

卒業後の主な進路

公務員の多さが特徴的!他にも幅広い就職!

まず、公務員志望が多いことが特徴的で、農林水産省をはじめとした官公庁や都道府県庁、市・区役所における農林系、環境系の専門職に就きます。
一般企業では、製造業や卸・小売業、特に大学で学んだ専門知識を活かせる食品関連会社への就職が特徴的です。他にも、バイオテクノロジー技術などの研究職、環境関連の調査・研究機関、製薬会社、化粧品会社、造園会社、植物関連会社など学べるフィールドが広いぶん、就職先も様々です。
理系の学部全般に言えることですが、大学院に進学して専門分野を深めていく人も多いようです。

専門用語を知ってるかな?

グリーン・ツーリズム

都市に住む人々が休暇を農村地域で過ごし、自然や文化、人々との交流を楽しむこと。田植えや農作物の収穫を体験する、その地域の特産品を味わうなど交流の形も様々です。個人同士というよりは地方公共団体などが主体となり、地域ぐるみで交流が行われるという特徴もあります。つまり、都市の人々にも地方の文化のよさを知ってもらうことで、農業人口が減っている農村地域を活性化させるといった根底の目的もあるのです。

バイオマス

再生可能エネルギーの1種で、生物由来の資源のこと。具体的には、生物の死骸・廃棄油・廃棄食品・余った作物・木材などを指します。バイオマスを燃料として燃やしたときに発生する二酸化炭素は、もともと空気中にあった二酸化炭素が吸収されたもの、つまり石油や石炭などの化石燃料と違って新たな二酸化炭素は作り出されません。そのため地球温暖化防止につながることが期待され、利用が進められています。

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