工学 航空・宇宙工学

どんな学問?

工学の知識を駆使し、航空・宇宙機器へ応用

工学の知識を駆使し、航空・宇宙機器へ応用のイメージ画像!「航空工学」も「宇宙工学」も、航空機やロケット、人工衛星、宇宙ステーションなどの設計・運用・整備について研究する学問です。発展の歴史や取り扱う内容が類似していることから、「航空宇宙工学」とも呼ばれます。
航空・宇宙工学のベースは、大きく4つの領域に分類できます。

●流体力学

翼や胴体にかかる空気抵抗を調べて、物体が空を飛ぶしくみを考える分野。

●構造力学・材料力学

航空機・ロケットの設計や、軽量で丈夫な材料の選定について学ぶ分野。

●熱力学・推進工学

効率的なエンジンの開発や、推進力の考案をする分野。

●制御工学

機体の制御について学ぶ分野。

また大学の専攻によっては、操縦士の資格を取得できるところや、航空機整備の実習授業を受けられるところもあります。実際の設計や研究にはコンピュータが多用されていて、コンピュータシミュレーションによって空気の流れを予測する「数値流体力学(CFD)」や、構造の変形や応力を単純な形状のパーツに分けて解析する「有限要素法(FEM)」などが重要性を増しています。
このように航空・宇宙工学は様々な工学分野を融合させた学問であり、工学の中でも応用的な分野だと言えます。

以前、航空・宇宙産業は欧米の独壇場でしたが、近年は日本でも開発や研究が盛んになりつつあります。例えば、自動車メーカーによって小型ジェット機の開発が進んでいたり、重工メーカーが国や大学と連携してジェット旅客機の開発に乗り出したり。また、宇宙産業でもH−ⅡAロケットやH−ⅡBロケット、イプシロンロケットの打ち上げが連続で成功し、世界レベルの技術と互角にわたり合えるようになっています。今後もさらなる発展が期待されている分野です。

こんな研究もあるよ

「乱流制御」は実現できるのか!?

航空工学に欠かせない「流体力学」。その重要なテーマに「乱流制御」というものがあります。「乱流」は、みなさんもよく目にすることができる現象です。例えば、水道の蛇口をひねって水を出すとき、水量が少ないうちは静かで緩やかな流れですが、水量を増やすと流れが乱れ、ジャバジャバと水の出る音が大きくなります。前者の流れ方を「層流」、後者の流れ方を「乱流」と言います。層流は制御しやすいですが、乱流は制御しにくく、発生のメカニズムに関しても不明な点がたくさんあります。しかし、自然界では大半が乱流であるため、コントロールすることができれば航空工学をはじめ様々な分野の発展につながります。

卒業後の主な進路

エアライン系など重工業の業界へ
機体・車体の設計が中心

卒業後は、ほとんどの学生が大学院に進学します。
大学院卒業後の主な就職先には、エアライン系や航空宇宙産業などがあります。また航空・宇宙工学は、自動車および関連機器、情報、電気電子、造船、電力など幅広い分野で応用されているため、それぞれの分野のエンジニアとして活躍する人もいます。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)などの研究機関に行き研究を深める人もいますが、そのような研究職に就く場合は大学院博士課程へ進学し、博士号を取得することが必要です。

ひとことコラム

21世紀は宇宙の時代 〜宇宙開発の現状〜

2010年、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は約60億kmの旅を経て、7年ぶりに地球に帰還しました。その機体は大気圏で焼失しましたが、世界で初めて小惑星の微粒子を持ち帰った探査機となりました。はやぶさが着陸した小惑星は、日本のロケット開発の先駆者・糸川英夫さんの名前にちなんで「イトカワ」と名づけられ、その微粒子は天文学のさらなる発展につながると期待されています。また、2014年には大きく改良された「はやぶさ2」が打ち上げられました。小惑星「Ryugu(リュウグウ)」に着陸し、2020年にサンプルを持ち帰る予定です。
一方、世界では民間企業による宇宙旅行もスタートしています。例えば、高度100kmの宇宙へ旅行するものや、高度400kmの国際宇宙ステーション(参照)に1週間ほど滞在するものなど。民間人初の月旅行も実現が近いとされており、大きな話題になっていますね。今はまだ限られた人のみが参加できる高額な旅行ですが、21世紀は民間の力で宇宙に飛び立つ時代になりつつあるのです。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

どのような人が航空・宇宙工学に向いていますか?

A.

未知のものに興味がある人、好奇心旺盛な人に向いています。物理学が好きな人も、その知識を活かせる部分が多いでしょう。またこの分野は大学・学部・学科に入るときだけでなく、航空宇宙業界で働くときも「狭き門」をくぐる必要があるため、つらいときも諦めない強い意志をもった人に向いているでしょう。

Q.

どんな実習を体験できますか?

A.

一般的には、まずしっかりと基礎知識を学び、実際に温度や振動などの測定や数値解析を行います。開発や設計に関するコースではCAD(参照)などコンピュータを利用して、機体や推進エンジン、制御系の設計・製図の技術を身につけます。また小型ロケットやエンジンの試作を行うところもあります。パイロットを目指すコースでは、フライトシミュレータやプロペラ機で飛行実習を体験するでしょう。それに伴ったライセンスを取れるところもありますが、航空身体検査やある程度の英語能力が必要となります。その他には制御実験や飛行実験、整備実習などが挙げられますが、いずれも大学や専攻したコースによって異なるため、大学の案内やホームページで確認しておきましょう。

専門用語を知ってるかな?

アビオニクス

航空機や宇宙船などに搭載される電子機器のことを指します。具体的には、通信機器やコックピットの計器類・飛行を管理するシステムなどのことを指し、航空機を運航するうえでなくてはならないものです。近年ではGPS(参照)の登場により航法に大きな変化がもたらされ、航空機の安全性を高める研究が進められています。

国際宇宙ステーション(ISS)

世界15カ国が協力し、地上から約400km上空に建設された巨大な施設のこと。時速約28000kmという猛スピードで地球の周りを回りながら、宇宙空間という特殊な環境で様々な実験や、地球・天体の観測を行うことを目的としています。
日本が開発を担当した実験棟は「きぼう」と名づけられ、そのなかの「船外実験プラットフォーム」という施設では、宇宙空間の低重力・高真空状態という特徴を利用して実験を行うことができます。

ジェットエンジン

圧縮した空気に燃料を混合し、着火・爆発させたエネルギーを推進力として利用するエンジンです。多くの場合、タービンと呼ばれる羽根車を回し、そこから得たエネルギーを利用します。現在の航空機は、大半がこのジェットエンジンを使っています。一方、自動車やバイクに利用されているエンジンはレシプロエンジンと呼ばれ、ジェットエンジンとは構造や原理が大きく違うものです。一般的にはジェットエンジンの方が大きなエネルギーや推進力を出すことができますが、エネルギー効率や小型化の面ではレシプロエンジンの方が優れていると言われています。

リモートセンシング

離れたところから地上の現象を解明する技術のことです。実際には、人工衛星や航空機に搭載されたセンサーで対象物から反射・放射された音波や光、電波を受信することによって、様々なデータを得ています。そこで得られたデータは、天気予報や地形図・災害対策・資源探査・地球環境の実態調査などに利用されています。

宇宙で深刻な「ゴミ問題」に立ち向かえ

九州大学 工学部航空宇宙工学科 花田 俊也先生

九州大学
工学部航空宇宙工学科
花田 俊也先生

危険!宇宙の「ゴミ問題」

「宇宙ゴミ」とは、人工衛星を宇宙へ運んだあとのロケットや、運用期間が終わった人工衛星など、宇宙空間にあるゴミのことです。 また、燃料が余ったまま捨てられたロケットが爆発したり宇宙ゴミ同士が衝突することで、細かい破片が増えていきます。 そういったものが現在23,000個もあると言われています。 宇宙ゴミの一番の問題は、数が増えることで衝突しやすくなり、 衝突することでさらに増えていくことです。高校の「第一宇宙速度」で習うように、人工衛星は7.9km/秒で周回しています。 そこに同じく7.9 km/秒で移動する宇宙ゴミが衝突したら約16km/秒の衝撃となります。仮に直径1cmのアルミ合金球(質量約1.4g)が約16㎞/秒で衝突すると考えましょう。これはボーリングの球(約14ポンド)が時速約860㎞であなたにぶつかってくる衝撃と同じです。
すると、とんでもない事故になります。また、宇宙ゴミは私たちにも危険を及ぼすことがあります。宇宙空間から落ちてきたゴミのほとんどは大気層で燃えてなくなりますが、まれに燃え残って地上に落ちてくることもあります。中にはロケットの燃料タンクが大きなサイズのまま落ちてくることも。それがもし人口密度の高いところに落ちたら大変なことになります。

100年後、200年後をシミュレーションする

私たちがこれ以上新しい宇宙ゴミを作らないようにしたとしても、今ある宇宙ゴミ同士が衝突して増えていく「ケスラーシンドローム」という現象が起こっていると言われています。大切なのは、まずそれが実際に起こっているかどうかを見極めること。そして、どのように宇宙ゴミを減らしていけるかをシミュレーションすることです。 この研究には様々な学問が必要になります。例えば、宇宙ゴミが衝突するときにどのような破片がどれくらい出るかをモデル化するためには「破壊工学」の知識が必要になります。また、破片が衝突する確率を出すためには「統計学」の知識が、さらに破片は軌道に乗って地球の周りをまわっているため「軌道力学」の知識も必要になります。皆さんが高校の物理で習う「ケプラーの法則」「ニュートン力学(運動の法則)」「万有引力の法則」、数学で習う「二次曲線」の知識なども応用しています。そういった学問を組み合わせて、100年後、200年後はどういう状態になるかをシミュレーションしていくわけです。

今のところ実現には至っていませんが、宇宙ゴミを除去するために様々な方法が考えられています。例えばJAXA※が提案している「導電性テザー」は、簡単に言うと導線を使った方法です。導電性テザーに電流を流すことでローレンツ力を発生させ、その力によって宇宙ゴミの軌道を下げていき、大気圏で燃やすというものです。あるいは宇宙ゴミに接触せず圧力で押し続ける方法も提案されています。また、大量の宇宙ゴミを除去していくためには、まずは近いうちに衝突しそうなものをランキングづけし、そこから先に対応していかなければなりません。除去するための燃料を節約しながら効果を最大限にできるような方法も考える必要があります。それから宇宙ゴミはたいてい回転していますから、その回転しているものに対してどうやって接近するか、どうやって除去器具を取り付けるかということも問題になります。そういったことがこの分野のこれからの課題になります。

※JAXA…日本の宇宙航空研究開発機構。アメリカのNASA(航空宇宙局)のような機関です。


「高校生へメッセージ」

答えがあるものに対して機械的に解くという訓練しかしていないと大学に入って本当に困ります。学問というのは答えに到達することが大切なのではなく、それまでにどのような考え方をしたかということが大切なので、考える癖をつけてほしいですね。
また、たとえ自分がやろうと思っている分野とはかけ離れていることでも学んでほしいです。学んだことがいつフィードバックされるかはわかりませんが、学んで損することはないと思います。私自身そういう経験しています。例えば、医学分野で使われている技術を利用したら意外とうまくいったなんてこともありますからね。自分の直面する課題に対して、何がひも解くものになるかはわかりません。だからこそ、どんなことに対しても貪欲に学んでほしいです。

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