ペットも生成AIも「家族」?
――現代家族の在り方を読み解く家族社会学研究

中央大学 文学部 社会学専攻 教授
山田 昌弘 先生


家族の外に広がる「愛情関係」とは?

私は、社会学の中でも「家族社会学」という分野を専門にしています。研究内容を大まかに言うと、「現代の家族の在り方」について「愛情」と「お金」という視点から分析しています。理論的な研究も行いますが、アンケート調査やインタビュー調査を通じて、現実の社会をさまざまな角度から調査・分析するのが私のスタイルです。
現在の研究の軸となっているのが、家族の外に広がる愛情関係についてです。一般的に家族は「愛情の場」だと思われていますが、離婚や虐待などに見られるように、家族の中に愛情が存在しない場合もあります。また、日本では結婚する人が少なくなり、家族のいない独身者も増えてきました。そうした人たちがどのように愛情関係を築いているのか、というのが今の研究のテーマです。たとえば、私は40年ほど前に「ペットは家族か?」という問いを立て、ペットを家族とみなして愛情を注ぐ人たちが増えていることを指摘しました。この研究について書いた著書「家族ペット」は高校の国語教科書にも採用されているので、読んだことがある人もいるかもしれません。また、最近では生成AIと結婚したという人も現れました。なぜそのようなことが起きているのか、アンケート調査とインタビュー調査を組み合わせながら、研究と分析を行っています。

母の介護経験から芽生えた、研究への思い

研究に進んだきっかけは、小さいころから当時の家族の在り方に疑問を持っていたことです。私の母親は公害病にかかり、長い間、寝たきりの生活を送っていました。長男だった私は大学に通いながら母親の介護や家事を担っており、今でいう「ヤングケアラー」だったのですが、当時はそのような若者を表す言葉すらありませんでした。その経験の中で、「なぜ家族でこんな苦労をしなければいけないのだろうか」と考え始めたことから、家族研究に興味を持ち始めました。母はすでに亡くなりましたが、「家族の愛情」で悩んでいる人の苦しみを少しでも和らげたい、という思いで今も研究を続けています。
「社会学」という学問分野を選んだのは、故・見田宗介先生の授業で「社会学の精神は、あたりまえのものを不思議なことのように考えてみることだ」という言葉を聞いたことがきっかけです。今まで当たり前だと思っていた家族の在り方も、実は不思議なことではないか。そのような気づきから、社会学の視点で家族を見ていこうと決心しました。

研究の魅力とやりがい
――多様な人生に触れることで得られる、前向きな希望

社会学は、データや調査に基づいて社会を分析する実証的な学問ですから、さまざまな形で現実の調査を行います。私はこれまでに10回以上のアンケート調査を実施し、100人以上にインタビュー調査を行ってきました。
アンケートのデータの裏には、インタビューを受けてくださった方々のさまざまな人生が見えてきます。人は一つの人生しか生きられませんが、多様な人生経験に触れることで、自分の人生を振り返り、前向きな希望を持つことができます。
また、社会学は現実社会の中でも直接役立つ学問です。女性活躍や少子化、高齢者の孤立などが社会問題になっていますが、こうした問題について、政府や自治体、マスメディアから意見を求められることがあります。自分の研究が社会に直接つながっていると実感できるとき、大きなやりがいを感じます。

社会学の研究に向いている人はどんな人?

社会問題に関心があることはもちろん、「常識」にとらわれない柔軟な思考を持っている人が社会学に向いていると思います。また、人の話をよく聴ける人や、調査データを読み解くのが好きな人も向いています。

高校時代に力を入れておくべきことは?

高校時代にぜひ取り組んでほしいのは、読書です。自分の関心のあるテーマについて、ネットの情報に触れるだけでなく、そのテーマについて書かれた本を読み込んでほしいと思います。教養書はもちろん、小説や漫画でも構いません。

山田先生からのメッセージ

たかが受験、されど受験です。自分で計画を立てて勉強し、テストで成果を確認する習慣は、社会に出てからも必ず役に立ちます。充実した大学生活を目指して、目の前のハードルを乗り越えてください。

(取材日:2026年3月)

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