これからの時代で必要となる能力とは?
ICT活用で実現する、新しい学び方

東京学芸大学 副学長/教職大学院 教授
堀田 龍也 先生


デジタル化が進む時代の教育のあり方を考える

私の研究を一言で表すと、「デジタル化が進む時代の教育はどうあるべきか」「子どもたちがどんな力を身につけるべきか」を探究することです。
現在、オンラインツールを使えば、遠隔地にいる専門家や他校の生徒とも簡単に交流し、議論できるようになりました。学校の授業も、ただ教員の話を聞くだけでなく、ICTを活用して子ども自身が知りたいことを主体的に深めていくスタイルへと広がりを見せています。このように、学習効率が向上し、出会いや学びの機会が増え、一人ひとりの個性に合わせた学び方が可能になることは、デジタル化がもたらす大きなメリットです。
一方で、光が強ければ影も濃くなります。SNSでのトラブルや不適切な情報との遭遇といったリスクも無視できません。子どもたちが安全に学べるように、適切なフィルタリング環境を構築し、デジタルツールとの適切なつきあい方を学校でしっかりと教えていく必要があります。
こうした状況を踏まえ、教育方法と教育内容の両面から、デジタル社会における学校教育の変化とあるべき姿を研究しています。

夢の実現と新たな目標
教室での試みによって拓かれた、研究への道

私は熊本県の天草で生まれ育ちました。高校時代までにたくさんの素敵な先生に出会ったことで、自らも学校の先生になりたいと志し、島を出て東京学芸大学に進学。一度、教員採用試験に落ちるという挫折も味わいましたが、その悔しさをバネに二回目で合格し、小学校教員になるという目標を叶えました。
教員として働く中で、学校にコンピューターが導入され始めました。学生時代のアルバイト経験からパソコンが使えた私は、授業にも取り入れてみることにしたのですが、それが多くの人に面白がられ、私自身も「この分野をもっと突き詰めたい」と考えるようになりました。そこから大学院へ進学し、現在の研究の道へと繋がっています。

求められる「自律的な学び」と、
子ども・教員が笑顔になれる環境づくり

私がそうだったように、人生の目標は、最初に決まったらそれで終わりではありません。次々と新しい目標が生まれ、塗り替えられていくものです。さらに、終身雇用が当たり前ではなくなった今の時代、自ら決断して学び続ける力が不可欠だと考えています。
だからこそ学校でも、教員がすべてを教え込むのではなく、子どもたちがその力を身につけていけるような授業の組み立てが重要になります。そして、そのプロセスにおいてICTを有効に活用すれば、子どもたちが自分のペースで学べて理解が高まるだけでなく、多忙を極める現場の先生方の業務負担を軽減することにも繋がります。そのような新しい教育環境を作ることこそが私の願いであり、現在の研究における大きなやりがいでもあります。

学校の先生だけではない、社会全体で支える「教育」

「子どもたちに良い教育を受けてほしい」というのは、我が子に対してだけでなく、大人ならば誰もが願うことではないでしょうか。では、その「良い教育」とは誰が作っているのでしょう。
私が現在所属する東京学芸大学は教員養成の中核となる国立大学ですが、卒業生全員が学校の先生になるわけではありません。WBCでも監督を務めた元プロ野球選手の栗山英樹さんや教育系YouTuberの葉一さんは卒業生ですが、彼らのように学校外の場で人を教え、支え、育てる仕事で活躍している卒業生も多くいます。
教育とは、誰かが「わかった!」となるのを助けたり、頑張る人を応援したりする尊い仕事です。そしてそれは、教員だけが担うものではありません。子どもたちに合った教材を作る人、不登校の子どもたちのためのカリキュラムを作る人、フィルタリングを提供する企業、テレビの教育番組を制作する人など、実はみんなで「寄ってたかって」教育を行っているのです。もし、そんな「教育」に興味があるのなら、将来教壇に立つかどうかは別として、教育学部で学ぶことには大きな価値があると思います。

堀田先生からのメッセージ

高校時代は、「自分は何がしたいか」を考える時間を大切にしてください。きっかけは何でもよく、すぐに一つに決める必要もありません。ただ、「自分は何に興味があり、そのためにどんな努力ができるか」を探し続ければ、本当にやりたいことの輪郭が見えてきます。その自己理解があれば、将来目標が変わったり、社会が変化したりしても、柔軟に次の道を選び取って進んでいけるはずです。
また、「受験勉強が無意味に思えてがんばれない」と思うこともあるかもしれません。もちろん受験勉強には「基礎知識の習得」や「困難を乗り越える練習」という大きな意味もありますが、最大の目的は、受験を通じて「自分に合った心地よい学び方」を見つけることだと思います。学びは、大学に合格したら終わりではなく、社会に出てからも一生続きます。だからこそ、ただ問題を解くだけでなく、「ノートにまとめた方が頭に入る」「何度も繰り返すことで身につく」といった自分に合う学びのスタイルを見つけてください。それは皆さんの夢を叶えるための、一生の財産になるはずです。

(取材日:2026年6月)

関連情報

同じ学科のインタビューを読む

「スクールカースト」の正体とは? 教室の“もやもや”を「言葉」にする教育社会学

東京電機大学 理工学部 教養教育センター 准教授 鈴木 翔 先生

教育で未来をデザインする――人間と世界の可能性を広げる挑戦

上智大学 総合人間科学部 教育学科 教授 上野 正道 先生

誰もが幸福に生きられる インクルーシブな社会を目指して

筑波大学 人間学群障害科学類 教授 米田 宏樹 先生

子どもの不思議と向き合い30年
幼児教育・保育の中の感覚的な「当たり前」を理論化する

名古屋柳城短期大学 学長/愛知教育大学 教育科学系 幼児教育講座 名誉教授 鈴木 裕子 先生

科学的根拠のある支援で子どもたちの不登校を予防する

愛知教育大学 教育科学系 学校教育講座 教授 五十嵐 哲也 先生

道徳の授業は「善か悪か」を教えるものではない

大阪教育大学 総合教育系 教授 金光 靖樹 先生

「英語が身につく授業」に必要なものとは?

秋田大学 教育文化学部 学校教育課程 英語教育コース 教授 佐々木 雅子 先生

グローバルなレベルで教育を考える 「国際バカロレアプログラム」って何!?

関西学院大学 教職教育研究センター 教授 遠藤 みゆき 先生

すべての子どもに等しく
質の高い教育を保障するには?

上智大学 総合人間科学部 教育学科 教授
酒井 朗 先生

生成AI・タブレット・クラウドーー今、「学校の授業」が変わろうとしている

山梨大学 教育学部附属教育実践総合センター 准教授 三井 一希 先生

学部から探す

大学の学問系統別にご紹介しています。さっそく興味のある学問から読んでみましょう。

四谷学院の「ダブル教育」
四谷学院について詳しくはこちら
個別相談会はこちら
資料請求はこちら

四谷学院の夏期講習

ダブル教育とは?

『学部学科がわかる本』冊子版をプレゼント 入学説明会・個別説明会の予約はこちら 入学説明会・個別説明会の予約はこちら
17GJWAZ

ページトップへ戻る