植物には目がないのに
なぜ光を感知できるのか?

佐賀大学 理工学部 化学分野 准教授
藤澤 知績 先生


仕組みを知りたい観察対象は
数ナノメートルの「光受容タンパク質」

多くの生き物が光に対して応答できることを、私たちは自然と知っています。例えば、植物は光の方向に葉を向けるし、植物の種は光のあるほうに向かって芽を出します。実はバクテリアのような微生物も同じようなことをしていて、光に向かう(あるいは光から逃げる)性質があります。植物もバクテリアも人間のように目を持っていないのに光を感知できるのは、光受容タンパク質をもっているからです。
タンパク質は、生き物には欠かせないアミノ酸が連なった高分子で、光受容タンパク質の特徴は色のついた色素分子がくっついている点です。色素分子の多くはビタミン類で、例えば植物が光を感知するのにはビタミンB、動物の目の光受容体にはビタミンAが使われています。こういったビタミン類が光を吸収して化学反応を起こすと、光受容タンパク質は動作するように上手に設計されていて、私はその仕組みを知りたくて光受容タンパク質の研究をしています。
光受容タンパク質の化学反応や動作の仕組みを知るには、それらを“みる”必要がありますが、タンパク質は大きさが数ナノメートルほどの小さい高分子なので通常の顕微鏡などでは観察することができません。そこで、研究室ではレーザーを使って光受容タンパク質を“みる”ということをしています。具体的にはラマン分光法と言われる方法を使って、光受容タンパク質のなかで化学反応をおこすビタミン類の構造を観測して、反応機構を調べています。

巧妙な化学反応に魅せられて
以来、タンパク質研究の道へ

私は大学の4年生の卒業研究のときからレーザーを使った研究をしてきましたが、最初はタンパク質が研究対象ではありませんでした。タンパク質に出会ったのは大学院の博士課程を終えたあとに、カリフォルニア大学で研究員をした時です。当時の研究室の先生から任されたテーマは、「緑色蛍光タンパク質の化学反応」の研究でした。緑色蛍光タンパク質(GFP)は2008年に下村脩博士がノーベル賞を受賞した対象で、タンパク質の内部に明るく光る色素分子を結合した、光受容タンパク質の一種といっていいものです。実は、GFPの色素分子は単独では光るものではなく、例えば水中に溶かしても全く発光しません。しかし、タンパク質のなかに入ると特有の化学反応を起こして明るく光ります。その仕組みを学んだときに、こんなにも巧妙な化学反応がおこせるものなのかと感動しました。その時以来、タンパク質という対象に魅せられて研究を続けています。

教科書に載っていない
予想外の発見が研究の醍醐味

タンパク質というのは生命活動のもとになっている分子ですから、タンパク質を研究していると生命現象の根本を垣間見ている面白さがあります。実際に、光で応答するタンパク質を扱っていると、小さな命の部品を扱っているような感覚になるときがあって、すこし感動的です。よく調べていくと「あぁ、生き物は分子レベルでこんなことをしているのか」という、教科書には載っていない新しい発見があるのも研究の醍醐味だと思います。
研究をしていて一番ワクワクするのは、予想外の結果がでるときです。もちろん、期待した結果が出るかどうかも大事なことですが、期待を裏切る予想外の結果は本当の発見につながるものです。自分の力が試される怖さがありますが、何が起きているかを追求できるやりがいもあります。

藤澤先生からのメッセージ

受験勉強では、問題に対して正しい答を出せるかどうかが合否に直結するので、答えが合っているかどうかが1番大事で、答えを導くまでのプロセスは2番目かもしれません。しかし、1番大事なのは実はプロセスの方だろうと思います。数学であれば、問題を解く一つ一つのステップを理解しながら解を導けるかどうか、英語であれば一つ一つの単語の意味と構文をつかみながら読み進められるかどうか、が重要だと思いますし、それができたときに“たのしく”感じるのではないでしょうか。「好きこそものの上手なれ」という諺は、楽しんでやることによって上手くなることを意味します。ストレスのかかる受験勉強のなかでも、学ぶ楽しさを忘れずに頑張ってほしいと思います。

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