太陽の力を地球で再現
持続可能な未来へ ― エネルギー革命への挑戦

東海大学 国際原子力研究所
夏目 祥揮 先生


1億℃以上の高温プラズマを、安全に冷やして消す

人類が豊かな暮らしを守りながら、100年先、1000年先まで繁栄していくためには、新しいエネルギー源を確保する必要があります。その理想的な候補の1つが、太陽と同じ「フュージョンエネルギー」を利用する「核融合発電」です。地球上で核融合反応を行うのはとても大変なことで、1億℃以上に熱したプラズマ(電気を帯びた気体)を真空容器の中に作り、長時間保たなければなりません。高温のプラズマが装置の壁に触れてしまうと、壁を傷めたり装置の寿命を縮めたりする恐れもあります。そこで重要になるのが、壁に触れる前にプラズマを冷やすことです。私は、高温のプラズマをうまく冷まして消す方法を研究しています。具体的には、核融合炉の仕組みを真似た装置でプラズマを作り、中性のガスを衝突させることで消す実験を行い、その過程を解析しています。あわせて、実験で見えた現象の理由を確かめるために、シミュレーションコードも開発し、コンピュータで現象の再現と検証を進めています。

受験勉強は研究道具を入手し、磨き上げる時間

私の研究の原点は中学生の頃に遡ります。ちょうど地球温暖化が社会で大きく取り上げられ始めた頃でした。当時、ダン・ブラウンの小説『天使と悪魔』を読んだ私は、そこに描かれた化石燃料ではない巨大なエネルギーの存在に強い好奇心を抱きます。そして、「もし化石燃料に頼らないエネルギー源を実現できれば、地球温暖化が解決できるのではないか」と考えるようになったのです。さらに、国語の授業で自由題のエッセイを書く機会があり、将来のエネルギー源を調べる中でフュージョンエネルギーに出会いました。これが、今の研究に興味を持つようになったきっかけです。
高校時代の勉強は、フュージョンエネルギー研究において、そのまま「基礎体力」になっています。受験勉強は研究で使う道具を手に入れ、磨き上げる時間ではないでしょうか。たとえば、数学は数値解析や数値シミュレーションコード開発の土台に、物理は実験装置の設計やプラズマ実験の結果の解釈に直結します。化学は扱う材料の選択や処理・腐食の理解につながり、国語は実験器具のマニュアルの正確な読み解きに効き、実験報告やプレゼン資料の作成にも役立ちます。英語は、論文の精読・執筆や学会発表の入口です。プラズマ実験のデータを分析する場面では、単に計測器を使えるだけでなく、その計測原理を理解しているかが測定の質を左右しますが、その基礎は高校で学ぶ内容の中にあるのです。

世界規模の目標に、ゲーム感覚で取り組む楽しさ

この研究における一番のやりがいは、世界規模の目標に直結している実感です。フュージョンエネルギーの実現は、各国がしのぎを削る国際競争である一方、同じゴールに向けてデータや知見を持ち寄る国際協力でもあります。装置や解析手法をめぐって意見を交わし、時に競い、時に支え合う――その相互作用の中で成果が加速していくダイナミズムは、この分野ならではの面白さです。
もう1つの魅力は、フュージョンエネルギー研究が「総合理工学」であることによる懐の深さです。プラズマ物理や電磁気にとどまらず、真空工学、材料工学、光学、電子回路、制御、データ解析、数値シミュレーション、さらにはコミュニケーションや文章表現まで、日々の研究の中で自然と鍛えられます。アイデアを図面に落とし込み、装置にして試し、得られたデータで仮説を確かめ、次の改良へとつなぐ――この一連の「考える・作る・測る・解く・伝える」を自分で回していけることに、とてもゲーム性を感じます。

夏目先生からのメッセージ

学生の頃、私はRPGゲームが好きでした。経験値でスキルを獲得し、装備を整えてキャラクターを育てる——勉強も同じ仕組みだと気づいてから、受験勉強が一気に楽しくなりました。頭の中に自分だけの“スキルボード”を描いて現在地を把握し、学習コストを払って新しいスキルを覚える。体力(HP)を見極めて休息し回復をする。成長に必要な“ストレス”と“休憩”をうまく配分して、どうすれば効率よくレベルアップできるかを脳と対話して考えてきました。実は今もその癖は残っていて、研究の目標達成に向けて、スキルボードを少しずつ広げ続けています。自分という主人公キャラクターを少しずつ強くする気持ちで、今日の一歩を楽しみながら積み重ねてください。

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