日常生活にも関係する「宇宙天気」を物理学で理解する

名古屋大学 宇宙地球環境研究所 附属統合データサイエンスセンター/大学院工学研究科 教授
三好 由純 先生


太陽の爆発が通信や測位に影響する?

私の専門は「宇宙空間物理学」と呼ばれる学問分野で、オーロラをはじめとする宇宙空間のプラズマ現象を、物理学を用いて理解しようとしています。太陽で爆発が起こると、地球でオーロラが見えるとともに、通信や測位など私たちの身近な生活にも影響が出ることが知られています。さらに、これから月や火星に行く際には、宇宙環境の理解と予測が欠かせません。このように私たちの日常生活に密接に関係している宇宙現象を「宇宙天気」といい、その変化の予測を「宇宙天気予報」と呼びます。この宇宙天気や宇宙天気予報の研究にも力をいれています。

オーロラに命中したロケットが世界初のデータを取得

私は、人工衛星のデータを解析したり、北極に出かけてオーロラを観測したり、観測ロケットを打ち上げたり、シミュレーションを行ったりと、様々な方法を用いて宇宙空間の研究を進めています。最近、特に力を入れているのは、JAXAが2016年に打ち上げた科学衛星「あらせ」による地球周辺の宇宙空間のデータ解析です。私自身が科学責任者を務め、日本や世界の研究者と一緒に研究を進めています。これまで知られていなかった様々な変化が次々と見つかり、ワクワクしながら研究を行っています。
また、北欧や北米にも観測に出かけています。2022年には、アラスカで観測ロケットを打ち上げました。現地で待つこと10日間、オーロラが出なかったり、空が曇ったりして、なかなか打ち上げのチャンスがありませんでしたが、10日目にロケットを発射し、オーロラに命中して世界初のデータが得られたときは感動しました。
さらに、コンピューターシミュレーションを開発したり、最近ではAIを使って予測システムの開発を行ったり、宇宙空間の環境変化を予測するために、様々な手法を積極的に取り入れながら研究を進めています。

探求心が導く先は、世界でまだ誰も知らない現象

私は高校生の頃に物理学を学び始めました。自然現象を数学によってモデル化し、その性質を調べていくという方法がとても面白く、大学進学の際に理学部の物理系を選択しました。大学に入ると、地震や気象、海洋現象を物理学で理解する「地球物理学」という分野があることを知りました。そして、その中に、「宇宙空間物理学」といって、オーロラをはじめとする地球周辺の宇宙空間の電磁気現象をプラズマ物理学や電磁気学を用いて研究する分野があり、人工衛星やロケット、地上観測データを分析しながら自然を調べていく研究に興味を持ちました。講義では、プラズマの理論を用いてプラズマ中に存在する波動を学び、その波動が実際の人工衛星で観測されている様子に大変感動し、ぜひ自分もこの分野の研究を進めていきたいと強く思いました。
自然現象の研究を進めていると、一見関係がないように見える現象が、実はつながっているのではないかと感じることに、しばしば出会います。それらの現象の間のつながりを、物理学の法則に基づいて考え、新たな仮説を立て、それを観測によって実証していくことに大きな面白さや自然の美しさを感じています。そして、世界でまだ誰も知らない現象を初めて目にするときは本当にワクワクし、とてもやりがいを感じています。

三好先生からのメッセージ

ぜひ、色々なことに興味を持ってください。大学で行われている研究は、皆さんが想像する以上に幅広いものですから、自分がワクワクできるものを積極的に探し出してほしいと思います。皆さんには、様々な新しい知識を習得してもらうだけでなく、私達や先人達が培ってきた知識や情熱を伝えたいと考えています。そのためには、自分の興味を広げ、様々な選択肢や可能性を考えていくことが大切だと思います。また、将来は皆さん自身が新しい研究分野を作り出すことも期待されています。これからの未来には、多くの課題や正解のない問いが待ち受けています。大学で、私たち教員と一緒に新しい発見を楽しみながら、科学の方法論や面白さを感じてください。そして、未知の問題に対して課題を抽出し、論理的かつ科学的な方法で解決する力を身につけていってほしいと思います。

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