本を読まなかった私が惹かれた文学の世界
「長い90年代」から、私たちの「現在」を知る

愛知県立大学 外国語学部 英米学科 准教授
青木 耕平 先生


アメリカ文学から読み解く「現代史」の始まり

私は、冷戦が終結した1989年以降の現代アメリカ文学とポピュラー・カルチャーを専門に研究しています。ソ連が消滅してアメリカが唯一の超大国となり、本格的なグローバル化や資本主義化が進み、インターネットや携帯電話が普及したのが1990年代です。アメリカ文化研究には「長い90年代」という言葉がありますが、現在まで続く「現代史」が始まったのがまさにこの時代であり、私たちは今もその地続きの感覚の中にいます。果たして1990年代を境に「文学・文化」はどう変わったのか? 1990年代のアメリカ文学・文化を研究することは、「私たちの現在を知るために必要である」という信念をもって、日々本を読んでいます。

全く読めなかった小説がスルスル理解できる面白さ

私が最も好きなアメリカ作家に、カート・ヴォネガットという人がいます。彼は1997年に最後の長編小説『タイムクエイク』を発表しました。学生時代に初めて読んだときは、まっっっったく何を言っているのか理解できませんでした。それが、大学院に進学し、1990年代の文化的な重要性を学んだとき、目から鱗が落ちるようにスルスルと理解できるようになったのです。それ以来、1990年代の文学や映画を読解する面白さにすっかり憑かれています。
文学を研究するからには読書が好きでなければならないか、と言うとそうでもありません。私自身、大学に入るまで漫画以外に本を読まない学生でした。大学で文学の面白さに出会ってから、たくさん読んでくれれば大丈夫です。本学の学生の多くは電車通学をしています。何を学ぶにしても読書は基礎中の基礎ですから、ぜひ通学時間を読書にあてる習慣を身につけてほしいと思います。

一枚の絵画から見つけた、文学研究のやりがい

私は高校時代、美術の教科書に載っていたゴーギャンの絵画「わたしたちはどこから来たのか わたしたちは何者か わたしたちはどこへ行くのか」を見て、雷に打たれたようなショックを受けました。まさにそれが、私の知りたいことだったからです。自分たちはどのような歴史をたどり、今ここにあるのか――そんな深い問いが1枚の絵画から突きつけられたことにも感銘を受け、「芸術とはなんと凄いものだ」と感じました。
私が文学という芸術を通して成し遂げたいのも、まさに同じことです。1990年代という現代史の最初の1ページを、2020年代の視点から「歴史化」して位置づけ、私たちの文化史を「語る」ことに貢献したいと考えています。その作業を通して「今の私たちはどこから来たのか」を鮮明に描き出せた、そう自分自身で思える論文を書けたとき、とてつもない面白さとやりがいを感じます。

受験勉強は「すべての学問の基礎」

私のゼミでは、英語の原書で小説を読み、議論をします。それは「辞書さえあれば本が読める程度に、英文法の知識があること」が前提です。また、小説を読んで議論すること自体、現代文で培う読解力があってこその作業です。さらに、すべての小説には歴史的背景があるため「世界史」の知識は不可欠ですし、日本で海外の文化を学ぶ意味を理解するには「日本史」の知識も必須です。大学受験での学習内容は、すべての学問の基礎ですから、ぜひ受験勉強を通じて、学びの基礎体力を最大化しておいてください。
一方で、高校時代から適度に遊んでおくことも大切です。私自身は硬式野球部で汗水垂らして頑張っていました。Dragon Ashが大名曲“Attention”の中で「つらいとき思い出しな あの坂ダッシュ」とラップしているように、つらいときの坂ダッシュの記憶は未来のあなたを助けてくれます。しかし同時に、お笑い芸人のゆりやんレトリィバアさんが「野球部は引退したらチャラなる」とネタにしていたのも、悲しいかな事実です。部活を頑張りすぎると、大学進学後に反動で遊びすぎてしまうこともあるので、頑張りすぎには気を付けてください。

青木先生からのメッセージ

悔いなくベストを尽くしてください。私自身、第一志望には届きませんでしたが、全力を出しきったという自負があったため、後悔はせず前を向くことができました。人生の悔いとは、ブルーハーツが「ラインを超えて」で歌っているように、「あの時ああすればもっと、今より幸せだったのか?」という嘆きの形で現れるものだからです。
大学選択において、様々な制約を抱えている人も多いでしょう。本当は地元を出たいのに、本当は私立に行きたいのに、本当は浪人したいのに……人生は不平等な面もありますが、まずは自分の置かれた状況でベストを尽くしてみてください。そして、入った大学で懸命に学び、自由と知識を得て大きく羽ばたき、この世界を今より良いものにしていきましょう。皆さんの頑張りを心より応援しています。

(取材日:2026年5月)

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