「よりよい学び」を追求する新領域
江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 情報文化学科 特任教授
松田 稔樹 先生
東工大で教育の研究?
私は令和6年度まで、東京科学大学(旧東工大)で教職科目を担当し、大学院では教育工学の研究指導をしていました。学生時代、私自身も教職科目をとっており、3年生のときに「卒業研究で教育の研究はできないか」と教職の先生に相談し、教育工学研究の道に進むことになったというわけです。「教育」と「工学」ってどう考えても結びつかない感じですが、それは「工学=モノを生産するための学問」という先入観があるから。でも、工学の本質は「問題解決」です。うまく解決するには設計や計画が大事で、何かを実現するために「もっとよい方法はないか」を考え、それを定式化していくことで設計や計画を支援する学問になるわけです。
「教授活動ゲーム」で生徒と先生を育てる
東工大時代も、今の江戸川大学でも、「教授活動ゲーム」の研究に取り組んでいます。みなさんは、勉強は机に向かってやるもの、人から教わるものと思っていませんか?でも、遊ぶとき、テレビを見るとき、友だちと話すとき、どこにでも学ぶ機会はあります。そんな日常の中にある学びを対話という形でゲーム化し、学びの過程をデータ収集して、それをもとに「どんな対話がよりよい学びを導くか」を研究しています。そこから「思考力」や「課題解決力」を高めるにはどんな働きかけをしたらよいのかを定式化して、先生の養成に活かすわけです。授業シミュレーションで、先生が「こういうふうに教える」と選択すると、「面白い」「わかんない」など個々の生徒の反応が返ってくるんです。そうやって先生自身が授業力をチェックしたり鍛えたりできるシミュレーションシステムを研究しています。今は、高校生の探究活動の仕方を学ぶためのゲームも開発しており、並行して、そのような活動を支援するための先生向けのゲームも開発しています。
人を育てるのは、あくまでも人
私の関心は、教育の本質とは何かです。人を育てるのはあくまでも人です。だから、この程度のことならシステム化できますよという範囲を示して、「人にしかできない教育とは何か」「先生は何をどう教えるべきなのか」を追求したい。私が思う「人にしかできない教育」の1つは、勉強がいかに面白いか、いかに役に立つかを教えるということですね。勉強によって自分が向上したという実感をもてない限り、勉強したって楽しくない。勉強は大学に入るためのものでも、就職するためのものでもない。自分は社会の役に立つ、という存在価値を証明するためのものだと思うんです。だから、「この勉強は何に役立つのか?」を人に問うだけではなく、「学んだことをどう活かすか」を常に意識してほしい。また、学びの場は日常生活の中のどこにでもありますから、何かをするときに常に問題解決ということを意識して、もっといい方法はないかを考えてほしい。そうすると、学校で学んだこと、生活の中で学んだことが結びついて、それが何に役立つのかは自ずと見えてきます。そういう経験は教師になろうとする人にとっては特に大事です。
松田先生からのメッセージ
今の若い人は、「みんなと同じ」という側に比重を置きすぎている気がします。でも、社会で役立つには「人と違う強み」をもち、「これができるのは君しかいない」と思われることが大事です。自分の「個性」を発見し、それを活かす努力や訓練は、将来、教師になって子ども達の力を発見し、伸ばすためにも大事ですね。









