ウニが教えてくれる命の不思議!
「体が作られるしくみ」と細胞の世界
今回は、ウニを使って「命がどうやって形作られるのか」を研究されている筑波大学の谷口俊介先生にインタビューしました。光を当てるとウニがどうなるかなど、つい「え!」と驚くような面白いお話も飛び出しました。自然豊かな臨海実験センターでの大学生活や、高校時代にやっておくべきことなど、ためになるお話が盛りだくさんです。進路に悩む人も、ぜひ読んでみてください!
筑波大学 生命環境学群
生命地球科学研究群
生命環境系 教授
谷口 俊介 先生
誰も見たことのない世界!
ウニの“細胞”の不思議
――先生は普段、どのような研究をされているのですか?
大きく分けると、2つのテーマがあります。1つ目は、生き物の「発生」についての研究です。
――「発生」というと、卵から体が作られていくことですか?
そうです。ウニの卵が成長して、幼生(赤ちゃんの状態)の体をどうやって形づくるのかを調べています。特に、神経の細胞がどうやって作られるのかという過程に興味を持っています。
――なるほど。もう1つのテーマについてもお聞かせください。
2つ目は、その作られた神経の細胞が、幼生の体の中でどう働いているかという研究です。例えば、光を浴びたときに、幼生の動きがどう変わるのか。食事の仕方や泳ぎ方を中心に調べています。今の研究室では、この「光と幼生の動き」について、特に集中して研究しているんですよ。
――具体的にどんな風に調べているのですか?
まず、研究材料のウニを、自分で海へ取りに行くところから始まります。もちろん、県や漁協の許可をもらってですが。
――ご自身で海に取りに行かれるのですね!
そうなんです。ウニの卵と精子を採って、受精させて、成長させます。それを毎日、顕微鏡で観察するんです。
目的は、どの遺伝子が、成長のどのタイミングで、体のどの部分で働くのかを突き止めることです。それによって「だからこんな形になるんだ」「だからこんな動きをするんだ」という結論を導き出します。
――遺伝子の働きを調べるのは難しそうです。
ウニの場合、「マイクロインジェクション」という方法を使います。100㎛(直径0.1ミリメートル)くらいのすごく小さな卵に、直接注射を打つんです。
――0.1ミリ!すごい技術ですね。
遺伝子の働きを調べるための薬を注入するのですが、うちの研究室のエキスパートたちは、この細かい作業を毎日こなしています。
ウニの幼生が全部「脳」に!?驚きの発見
――この研究の面白さや、やりがいはどんなところですか?
やっぱり、「誰も見たことがない世界を覗けること」ですね。これが一番面白いです。
――今までで一番驚いた発見はどんなことですか?
たった一つの遺伝子をいじっただけで、ウニの幼生の体全体が「脳」になってしまったことがありました。あの時は本当に驚きましたね。あとは、光を当てるとウニの幼生がウンチをすることを発見した時もワクワクしましたよ。
――それは驚きです!そもそも、先生はなぜこの研究分野を選んだのでしょうか?
理由はとてもシンプルで、「海が好き」「生き物が好き」ということに尽きます。
――その中でも、ウニを専門に選んだ決め手はあったのですか?
特別な決め手はなかったのですが、ウニは実験生物学の世界でとても長い歴史があるんです。海の生き物の中で、モデルとして研究するのにすごく適しているんですよ。
大変だからこそ面白い!
自然と生き物に囲まれた研究室ライフ
――先生の研究室は、普段どんな雰囲気なのでしょうか?
研究に関しては、かなり厳しく指導しています。器具や顕微鏡の使い方は、うちの研究室を卒業したら、どこへ行っても恥ずかしくないレベルになってもらうつもりです。
――プロを育てるための厳しさですね。日常的な部分はどうですか?
日常はだいぶ和気あいあいとしていますよ。学生の誕生月にはケーキでお祝いしたり、送迎のタイミングに合わせてみんなで食事に行ったりもしています。
――メリハリがあって素敵な環境ですね!卒業生のみなさんは、どのような分野に進まれることが多いですか?
本当に色々な業界に進んでいます。博士課程まで進む人は、大学や企業で研究職に就くことが多いです。学部や修士課程で卒業する場合は、企業をサポートするコンサルタントから研究員まで、本当にバラエティに富んでいます。
――大学・学部の、独自の強みはどんなところでしょうか?
私は伊豆の下田にある下田臨海実験センターというところに所属しています。すぐそばに海がある、とても恵まれた環境です。
都会が大好きな人には少し寂しいかもしれませんが、研究に集中するには最高の場所です。毎日海を眺めて、「自然って不思議だな」「生き物って面白いな」と感じることは、若い時にとても大切だと思います。
――研究に没頭できる、素晴らしい環境ですね!
そうですね。ただ、自然の中“だけ”で過ごすのは大変な時もあるので、たまには都会へ息抜きに行くこともおすすめしています(笑)。
――大学での学びを通して、学生たちにどんなふうに成長してほしいですか?
「選択肢は常に多いほうがいい」と考える人に育ってほしいですね。
研究というと、一つのことを狭く深く掘り下げるイメージがあるかもしれません。でも実際は、浅くてもいいので広い視野を持った上で、自分の興味がある道に進んでいくことが大事なんです。
――他に身につけてほしいことはありますか?
コミュニケーション能力ですね。他人の気持ちを汲み取って、頑張ってコミュニケーションをとる努力はしてほしいと思っています。
高校時代は「遊ぶこと」と「体力づくり」が最優先!
――高校時代に、特に力を入れておくべき活動はありますか?
とにかく「遊ぶこと」と「運動すること」です!
――勉強よりも、ですか?
勉強は、放っておいてもやらなきゃいけないことですよね。だから、時間をうまくやりくりして、友達とプチ旅行に行ったり食事をしたり、遊ぶ時間を最大限作れるように工夫してほしいと思います。
――高校時代に学んだことの中で、今の研究に活きていると感じるものはありますか?
そうですね。私は英語が苦手で、大学受験の時もそれが足を引っ張りました。だから大学に入ってから一生懸命勉強したのですが、それが今の仕事にすごく活きています。
また、受験では生物と物理を選択したのですが、生物学を研究する上で物理の知識があったのは、とても良かったと感じています。
――先生おすすめの勉強法はありますか?
とにかく朝早く起きることですね。数学なんかは特に、朝の頭の回転だとスラスラ解ける気がしていました。
――落ち込んだり、困難にぶつかったりした時はどう乗り越えていましたか?
「テストで点が取れないなー」と思ったことは何度もありますが、あまり「困難」だと思っていなかったかもしれません。「これが今の自分の実力だから、次頑張るべ!」という感じで、あまり深く考えすぎないのが良かったんだと思います。
――生物学に興味がある高校生に、おすすめの本はありますか?
本を読む暇があったら、海や山、野原へ出ることをおすすめします。自然を超える本はないですからね。
――最後に、大学を目指す高校生へ応援メッセージをお願いします!
受験に限ったことではありませんが、社会に出ると「体力勝負」なことがたくさんあります。中高生のうちに、しっかり体力づくりに励んでください。いざという大事な時に、ナヨナヨ、ヘロヘロしていては勝負になりませんからね!
ウニの研究を通じて、生命の不思議さや自然の偉大さを教えてくれた先生。そのお話からは、研究への厳しい姿勢と、学生や自然への深い愛情が伝わってきました。「本を読むより自然へ出よう」「とにかく体力づくりを!」という力強いメッセージは、きっと皆さんの背中を押してくれたはずです。机に向かう時間も大切ですが、たまには外に出て、思いっきり体を動かしてみてくださいね!
(取材日:2026年9月)
筑波大学 生命環境学群 生命地球科学研究群 生命環境系
https://www.life.tsukuba.ac.jp/
谷口 俊介 先生の研究室
https://sites.google.com/site/yaguchisea/home









