心理学

どんな学問?

人の「こころ」と向き合う学問!

人の「こころ」と向き合うイメージ画像!「この人は今、何を考えているのだろう?」「彼があのような行動をとったのは、なぜだろう?」「どうしたら人間関係がうまくいくのだろう?」――。きっと誰でも一度はこういった疑問を抱いたことがあるでしょう。
「心理学」は、目で見ることのできない「こころ」の動きを、目に見える行動や反応をもとに、実験や観察を通じて科学的に解明する学問です。研究のなかでは、統計という数学的な分析を行うなどパソコンと向き合う作業も多いため、文系と理系の両方の要素をもった学問と言えます。またアンケート調査や各種実験も必要不可欠であり、これらは大学の授業でも実際に経験できます。
もちろん、心理学を学んだからといって人の心がすべてわかるわけではありません。しかし、客観的に相手を見る力やデータを分析する力を養うことができれば、心理学的な観点から苦しんでいる人の手助けをすることもできるでしょう。
心理学の各研究分野は互いに融合しているのが特徴ですが、大きく「基礎心理学」と「応用心理学」に分けられます。それぞれの代表的な分野を挙げてみました。

1.基礎心理学

●認知心理学

「モノはどのようにして見えているのか」「人の顔と名前をどうやって覚えるのか」といった認知のあり方に関する分野です。この分野の研究は、街で見かける広告や看板、危険を知らせる標識や商品のデザインなどに応用されています。「認知科学」や「脳科学」とも関連があります。

●発達心理学

人間が生まれてから大人になり一生を終えるまでに、心はどのように変化していくのか、何がきっかけで変化していくのかといった発達のしくみや発達を妨げる要因について研究する分野です。発達段階によって、「乳幼児心理学」「児童心理学」「青年心理学」「老年心理学」などに分かれます。

●社会心理学

人は社会との関係なしに生きていくことができません。社会心理学は、個人と集団の関係、集団における心の動きを対象とします。身近なところでは、「第一印象はどれくらいあてになるのか」「ブームや噂はどのように作られ、広まるのか」などもこの分野のテーマです。社会学的な要素も含まれます。この他にも「生理心理学」「学習心理学」「知覚心理学」「行動心理学」「思考心理学」などの分野があります。

2.応用心理学

●臨床心理学

深い悩みがある人を診断し、心理的技術による問題解決や、治療の手助けを目的とした学問です。「精神医学」や「心身医学」に関する知識も必要となります。臨床心理学は、東日本大震災や凶悪犯罪などの衝撃的な出来事に限らず、日々の犯罪・うつ病・いじめ問題など現代社会で活躍の場が広がっています。

●教育心理学

教育現場で起こる様々な事柄について、心理学の観点から明らかにし、よりよい教育や問題解決に活かそうとする分野です。人格形成・知能の発達と教育との関係、教師と生徒との関係、児童特有の心理などについて研究します。発達心理学や社会心理学とも関連があります。

●産業心理学

産業活動に関連する事柄を心理学的な方法によって研究する分野です。例えば仕事に対する動機づけや、組織における個人の行動(リーダーシップ・意思決定など)、職場におけるストレス、消費者行動(購入する製品を決めるまでのプロセスなど)といったものが研究対象となります。
  
この他にも「犯罪心理学」「コミュニティ心理学」「家族心理学」「スポーツ心理学」などの分野があります。

専門用語を知ってるかな?

IQ / EQ

IQはよく耳にしますが、Intelligence Quotientの略で「知能指数(知的能力)」を表すものです。平均値を100とし、90 ~ 110が標準とされています。EQはEmotional Intelligence Quotientの略で「こころの知能指数」とも呼ばれ、人の気持ちを理解する能力、自分の感情をコントロールする能力、状況に応じて適切な行動をとる能力などを表すものです。近年では、社会で成功するためにはIQの高さだけでなくEQの高さも必要だと考えられ、EQへの関心が高まっています。

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)

心的外傷後ストレス障害と訳され、恐怖体験や心のストレスを受けたあとに生じる様々な心理的障害のこと。フラッシュバックや無感動、パニック発作、幻覚などの症状があります。東日本大震災や9.11テロの後遺症問題などで取り上げられます。

アダルトチルドレン

もとは「アルコール依存症の親のもとで育ち、成人した大人(Adult Children of Alcoholics)」という意味でしたが、現在ではアルコール依存症に限らず、虐待やギャンブル依存症の親のもとで育ち、成人してもなお精神的影響を受け続ける人のことを言います。

イド/自我/超自我

イド(エス)は無意識層の中心部分にある本能や欲望にあたるもの。自我(エゴ)は意識層の中心部分にある理性にあたるもの。そして超自我(スーパーエゴ)は意識層と無意識層をまたぐ機能で倫理や良心、道徳にあたるもの。フロイトによって定義された精神構造の概念です。

単純接触効果

特定の対象に何度も接するうちに、好意的な感情を持ちやすくなる効果のことです。その対象は人に限らず、音楽や食事、広告などに対しても起こります。

ロールシャッハテスト

10枚のインクの染みのような左右対称の図形を見せて、それが何に見えるかの反応によって心の深層を理解しようとする人格検査です。他にも木の絵を描かせることによって人格を判断する「バウムテスト」、8枚の写真から好きな顔と嫌いな顔を選ばせる「ソンディテスト」などがあり、大学の授業で体験できることもあります。

Q&Aこんな疑問に答えます

Q.

どのような人が心理学に向いていますか?

A.

人との関係が切り離せない学問なので、人に興味がある人、人と話したり人と関わることが好きな人に向いています。臨床心理士やカウンセラーになりたい場合、現実には「狭き門」となるため、「悩んでいる人の力になりたい」という強い意志が必要です。

Q.

心理学を学びたいと思っています。大学選びで気をつけることはありますか?

A.

心理学は非常に幅広い分野を持つ学問です。文系というイメージが強いかもしれませんが、精神物理学や脳科学といった理系分野もあります。そのため、心理学の全範囲を網羅している大学はなかなかありません。心を脳の活動として研究したいのか、臨床心理学を学びカウンセラーになりたいのかなど、自分の希望を明確にした上で大学選びをすることが大切です。
名前に「心理」とつかない学科でも心理学を学べることがあります。代表的なものをご紹介しましょう。

心理学を学べる学科例

Q.

心理学科では4年間どのように学んでいくのですか?

A.

基本的には以下のような流れで学びます。

心理学科の基本的流れ

Q.

心理学科を卒業しないとカウンセラーにはなれないの?

A.

カウンセラーにも、様々な資格や職種があります。例えば臨床心理士の資格を取得するには、指定された大学院を修了して受験資格を得る必要があります。つまり、心理学科を卒業していなくても資格を取得できますが、大学院入試の難易度や競争率を考えると、大学の4年間でしっかりと心理学を学ぶのが最短コースと言えるでしょう。

こんな研究もあるよ

箱の中の世界から心理を分析——「箱庭療法」

心理学のなかには様々な理論や心理療法がありますが、日本で特に注目されているのが箱庭療法です。これはユング派の精神分析方法の1つで、クライアントの前に砂の入った箱を置き、人形やおもちゃを使って自由に庭を作ってもらいます。言葉では伝えきれないクライアントの内面世界を表現させ、カウンセラーが分析し、治療するという方法です。
この箱庭療法を授業の中で体験できる大学もあります。学生は箱庭を作るクライアント側と、それを見守り、クライアントが安心して箱庭を作れる環境を保護するカウンセラー側の両方の立場を体験します。さらに、完成した箱庭はどのような心を表しているのかという査定の仕方まで学んでいきます。
その他、「遊戯療法」や「絵画療法」などの実習を行う大学もあります。

卒業後の主な進路

心理学を活かした資格を目指す人が多数!

心理学で学んだ知識や経験を活かせる分野は幅広くあります。
臨床心理士や公認心理師になるために大学院進学を目指す人も多くいます。その他の資格としては、社会福祉士、認定心理士、心理判定員などがあります。就職先としては、児童相談所をはじめとする各種相談所、福祉施設、行政機関、矯正保護機関・施設などが考えられます。さらに現在は、職場で社員や従業員のカウンセリングを行う産業カウンセラーのニーズも高まっています。
一方で、一般企業に就職する人も多く、業種は他の人文科学系出身者と同様に様々ですが、商品開発、人事部門などに就く道もあります。

カウンセラーも夢じゃない

Interview

犯罪心理学で犯罪を防ぐ

東洋大学 社会学部 社会心理学科 桐生 正幸先生

東洋大学
社会学部 社会心理学科
桐生 正幸先生

犯罪心理学とは

「犯罪心理学」というと、皆さんはどんな内容をイメージするでしょうか?凶悪事件の犯人の心の闇を覗く、完全犯罪の謎を解く、受刑者や非行少年の立ち直りに寄り添う、犯罪者の心を治療する、などなど……。実際に、これらすべてが犯罪心理学の研究領域です。それぞれに対応する専門的組織があり、各専門家が社会の中で仕事として犯罪心理学を活用しています。

科捜研で犯罪心理学に出会う

私は元々、大学で心理学を学んだことから、それを将来の仕事に活かしたいと考えていました。ただ当時は、現在の「公認心理師」のような国家資格もまだなく、心理学を活かす仕事自体がとても少ない時代でした。私はたまたま地方公務員の心理学研究職に合格できたのですが、配属されたのが警察本部にある「科学捜査研究所(通称:科捜研)」で、意図せぬ展開に我ながらとても驚きました。警察組織は、職種のほとんどが警察官であり、次に事務を担当する職員がいます。その職員の中で、研究職である科学捜査研究所のメンバーは数十人。心理学担当者は、法医学、化学、工学などの担当者と比べ最も少ない人員でした。心理学担当者の主な仕事は、「犯罪者プロファイリング」と「ポリグラフ検査」の2つです。大きな事件が発生すると警察官と一緒に現場に急行し、心理学的な分析を行うためのデータを収集するところから始まります。「犯罪者プロファイリング」は、過去の事件データと発生した事件データを見比べながら、高度な統計分析を行い、犯人の特性や生活拠点、次の犯行エリアを推定するなどします。「ポリグラフ検査」は、心電図などの生体反応を測定し、事件に関係した人でなければ分からない犯罪事実に関する記憶の有無を検討し ます。このような仕事を通して、多くの犯罪現場や事件関係者に遭遇し、犯罪心理学研究の面白さに魅せられていきました。

犯罪心理学で「ひったくり」の発生を30分の1に

大学教員となってからは、地域防犯を中心とした、身近な犯罪に対して研究を行っています。例えば、自治体と共同で、犯罪心理学を用いて具体的な犯罪予防に取り組んでいます。その結果、ある市内の「ひったくり」を、4年間で300件から10件台まで減少させることに成功した事例もあります。また、損保業界の方々と一緒に、保険金詐欺防止のための調査・活動で大きな効果を得られたこともありました。現在は、未成年者におけるSNSを介した犯罪被害予防の研究や、カスタマーハラスメント(顧客・消費者からの過度な要求やクレーム)、特殊詐欺に関する研究をしています。このように、警察を離れた場面でも、実社会の問題に対して、犯罪心理学が役立つことを実感しています。

桐生先生からのメッセージ

将来どのような仕事に就きたいか、ある程度ビジョンを定めてから、それに近づける大学や学部・学科を探し、受験することをおすすめしたいです。たとえばもし、犯罪心理学を活かした仕事に就きたいと思ったら、各大学で犯罪心理学を教えている先生の研究領域、学問的背景を調査してみるとよいでしょう。

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