成城大学 社会イノベーション学部 心理社会学科 新垣 紀子先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

新たな技術やサービス
創造と普及の鍵は、人々の「心」にあり!

成城大学 社会イノベーション学部 心理社会学科 教授
新垣 紀子 先生


人々に受け入れられない製品とは?

私の研究分野は認知科学です。認知科学的な観点から、イノベーションの「創造」と「普及」に関わる人の心理について研究を行っています。イノベーション(innovation)とは、直訳すると「革新」という意味になるのですが、新しいアイデアや技術、それによって生まれる新しい製品やサービス等のことを指します。
以前は、イノベーションの「普及」に関わる研究をしていました。私たちの生活には、情報処理技術の発展によって、日々新しいシステムやサービスが登場しています。しかしながら、新しく登場した製品の全てが人々に受け入れられるわけではありません。では、受け入れてもらえないものとは、いったいどんなものなのでしょうか。それを理解する一つの手がかりとして、まず、私たちの身の周りにあるシステムと人のトラブル(わかりにくさなど)に焦点を当てて検討することにしました。街中を歩き回り、自動改札や自動販売機のようなシステムのわかりにくさを示す注意書きなどがあれば写真をとって整理し、傾向を分析したこともあります。そこでわかったのは、人は初めて見るシステムに対しても、何らかのメンタルモデルに基づいた行動をする、ということです。メンタルモデルとは、人がモノやシステムに対して予め持っているもので、簡単にいうと、多分こういうふうに動くのだろうと推測している、ということです。そのため、これまでにない全く新しいシステムを作るときには注意が必要で、使い手のメンタルモデルとのギャップに注意し、人々に受け入れてもらえるような工夫をする必要があります。

アイデア生成を促進・阻害する要因を探る

最近は、イノベーションの「創造性(クリエイティビティ)」についても研究を進めています。魅力的なサービスや商品を開発することは、企業やデザイナーにとって非常に重要な課題です。これまでにない独創的なアイデアは、いったいどのように生み出されるのでしょうか。「三人よれば文殊の知恵」と言われていますが、実はアイデア生成に関する心理学研究では、複数人チームで作成されたアイデアが、個人で作成されたアイデアを複数人分まとめたものよりも劣る場合があることが知られています。また、斬新なアイデアは、その価値を他者に認められにくく、企業においても、画期的なアイデアを意思決定者が「つまらないもの」とみなしてしまうことが、イノベーションを阻害する要因の一つとも考えられています。
より良いアイデアを世の中に出していくためには、アイデア生成を促進する要因、阻害する要因についての研究を進めていくことがとても重要です。

心の働きを解明し、より良い社会を作っていく

私はもともと、学生時代は物理学の研究をしていました。博士課程を修了後に情報系企業の研究所に就職したのですが、そこで、情報処理技術の発展やインターネットの黎明期を目の当たりにしました。そのとき出会ったのが、人の心の働きを解明しようとする認知科学です。技術やシステムが日々変化する中で、それが人の思考や営みにどのような影響を与えるかを明らかにすることは、とても重要だと考えました。人の心の働きは、見えるものではありません。実験を計画して、見えない心の働きのメカニズムを明らかにしていく認知科学は、物理学に共通するところがあり、とても心惹かれる分野でした。人の心の働きを明らかにすることが、教育やビジネス、システムやサービスをデザインする場面で役に立つ、というのは、この研究の面白さであり、やりがいです。人間のことを理解するのは、より良い社会を作っていくためにとても重要なことだと考えています。

新垣先生からのメッセージ

自分の心の働きは、自分が一番わかっている、と思いがちですが、実際には、その時の状況や、それ以前にどんな状況や情報に触れているか、ということに影響を受けた動きをしています。この現象は、人が必要な時に、すばやく適切な判断や意思決定をすることができるという、人の賢さの仕組みの一つでもあります。このような人の心の働きの研究は奥が深いです。みなさんも一緒に研究してみませんか。

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