犯罪心理学で犯罪を防ぐ
東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授
桐生 正幸 先生
犯罪心理学とは
「犯罪心理学」というと、皆さんはどんな内容をイメージするでしょうか?凶悪事件の犯人の心の闇を覗く、完全犯罪の謎を解く、受刑者や非行少年の立ち直りに寄り添う、犯罪者の心を治療する、などなど……。実際に、これらすべてが犯罪心理学の研究領域です。それぞれに対応する専門的組織があり、各専門家が社会の中で仕事として犯罪心理学を活用しています。
科捜研で犯罪心理学に出会う
私は元々、大学で心理学を学んだことから、それを将来の仕事に活かしたいと考えていました。ただ当時は、現在の「公認心理師」のような国家資格もまだなく、心理学を活かす仕事自体がとても少ない時代でした。私はたまたま地方公務員の心理学研究職に合格できたのですが、配属されたのが警察本部にある「科学捜査研究所(通称:科捜研)」で、意図せぬ展開に我ながらとても驚きました。警察組織は、職種のほとんどが警察官であり、次に事務を担当する職員がいます。その職員の中で、研究職である科学捜査研究所のメンバーは数十人。心理学担当者は、法医学、化学、工学などの担当者と比べ最も少ない人員でした。心理学担当者の主な仕事は、「犯罪者プロファイリング」と「ポリグラフ検査」の2つです。大きな事件が発生すると警察官と一緒に現場に急行し、心理学的な分析を行うためのデータを収集するところから始まります。「犯罪者プロファイリング」は、過去の事件データと発生した事件データを見比べながら、高度な統計分析を行い、犯人の特性や生活拠点、次の犯行エリアを推定するなどします。「ポリグラフ検査」は、心電図などの生体反応を測定し、事件に関係した人でなければ分からない犯罪事実に関する記憶の有無を検討し ます。このような仕事を通して、多くの犯罪現場や事件関係者に遭遇し、犯罪心理学研究の面白さに魅せられていきました。
犯罪心理学で「ひったくり」の発生を30分の1に
大学教員となってからは、地域防犯を中心とした、身近な犯罪に対して研究を行っています。例えば、自治体と共同で、犯罪心理学を用いて具体的な犯罪予防に取り組んでいます。その結果、ある市内の「ひったくり」を、4年間で300件から10件台まで減少させることに成功した事例もあります。また、損保業界の方々と一緒に、保険金詐欺防止のための調査・活動で大きな効果を得られたこともありました。現在は、未成年者におけるSNSを介した犯罪被害予防の研究や、カスタマーハラスメント(顧客・消費者からの過度な要求やクレーム)、特殊詐欺に関する研究をしています。このように、警察を離れた場面でも、実社会の問題に対して、犯罪心理学が役立つことを実感しています。
桐生先生からのメッセージ
将来どのような仕事に就きたいか、ある程度ビジョンを定めてから、それに近づける大学や学部・学科を探し、受験することをおすすめしたいです。たとえばもし、犯罪心理学を活かした仕事に就きたいと思ったら、各大学で犯罪心理学を教えている先生の研究領域、学問的背景を調査してみるとよいでしょう。









