大学教授
インタビュー

「情報通信と数学」

山田 功 先生Isao Yamada

東京工業大学 工学院 情報通信系 教授

山田 功 先生

高品質な通信を目指して

電話で話をしていると、やまびこのように自分の声が遅れて聞こえてくることがありませんか? 電話はマイクに向けて話した声が相手のスピーカーから出ることで伝わりますが、このやまびこは、スピーカーから出た音が相手側のマイクに入り、こちら側に戻ってきてしまうために起こります。そこで、やまびこが起こる一瞬の間に、戻ってくる音の特性を推定し、それを消す仕組みを通信システム内部に組み込むと、自分の発した声は消されて、相手が話した内容だけがこちらに届くようになります。こういった仕組みは、音響エコーキャンセラーと呼ばれ、現在多くの製品に組み込まれています。

キーは数学

このような情報通信の問題を解決するために重要なのは数学です。先ほどのやまびこの問題も本質を捉えると、全て数学の問題に置き換えることができます。例えば、音声など送受信する情報は「ベクトル」で表現し、情報を加工する操作は「行列」をかけるという操作に対応します。加工した情報を復元するために「数列」を使い、雑音の性質はランダムで予期するのが難しいので「確率」を使って解明します。その他、微分・積分の考え方も使われています。数学は基礎的な分野で科学技術・先端技術とはかけ離れたものだというイメージがありますが、このように、数学をうまく応用することで、様々な問題を見通しよく解決できるようになるのです。

数学が情報通信を変える

現実の諸問題を解決するために既存の数学を応用することはもちろん、新しい数学を作り出すこともあります。例えば私は、一見結びつきそうにないとされていた「不動点近似」と「最急降下法」という2つの原理を結びつけて「ハイブリッド最急降下法」というアルゴリズムを開発し、その性質を説明する新しい定理を作り出しました。嬉しいことに、この定理のアイデアは、国内外の多くの研究者に知られることとなり、画像処理や音響信号処理など情報通信の諸問題の解決に応用されています。また、最近では多くの応用数学者にも注目されるようになってきました。同じことを研究し続けていると行き詰まってしまうことがあります。そういった行き詰まりの多くは、アイデアの資源がなくなってしまうことが原因です。アイデアの資源となる新しい数学を開拓することで、さらに研究を続け、技術をより向上させていくことが可能になるのです。

メッセージメッセージ Message

私は、高校生の頃から数学がとても好きでした。そして次第に「将来、数学を使って、科学技術の世界で役に立つ定理を作りたい」と思うようになり、情報通信工学を選びました。情報通信工学は、問題の本質を見抜く力があれば、現在の高校生でも大いに活躍できる分野です。現在勉強している数学も、わかったふりをするのではなく、肌で感じられるレベルで本質から理解する習慣を身につけてください。そうすると、数学はもっと面白くなりますよ。

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