大学教授
インタビュー

「一枚の説得力のある写真が
ものを言う血管研究」

久保田 義顕 先生Yoshiaki Kubota

慶應義塾大学医学部 解剖学教室 教授

久保田 義顕 先生

教科書に書かれている「常識」への疑念がきっかけ

医学部卒業後は、形成外科医を4年ほどやっていました。形成外科ではキズや褥瘡(じょくそう)(いわゆる「床ずれ」)を扱います。「キズの治りには血管が大事」と、どの教科書にも書かれているのに、血管が豊富に見えても一向に治らないキズや褥瘡をたくさん経験し、教科書に書かれている「常識」に疑念を抱いたことが研究を始めたきっかけです。研究を進める中で、血管はただ量が増えればよいだけではなく「質」が重要、つまり動脈→毛細血管→静脈のバランスがとれていないと機能しないということがわかりました。このように常に向上心や知的欲求を満たしてくれる研究に没頭したいと思い、研究者を志すようになりました。

「血管」の仕組みを細胞・分子のことばで解き明かす

現在は、わたしたちの体のすみずみまではりめぐらされている血管の網目が、発生時にはどのように形作られるかを、細胞・分子のことばで解き明かそうとしています。樹木のように太いものから細いものに枝分かれしていく構造がどういうからくりでできあがっていくのか、あるいはどうしてこれだけたくさんの血管が毛玉のように絡み合うことはないのかというようなことについてです。この研究の面白さは、複雑な数値や棒グラフなどではなく、一枚の説得力のある血管の写真がものを言うところです。それにより研究の歴史が積み重ねられてきました。例えば、既存の血管が血管の無い場所に広がっていく際、その最先端部には「tip細胞」という先導役がいて集団の伸びていく方向を決めています。すぐ後ろの2列目には「stalk細胞」という血管の細胞数を増やすことに特化した細胞がいます。後続の細胞群はそれらについていくように大挙して動いていきます。同じ血管細胞でもそれぞれ役割分担があり、人間社会のような挙動をみせるのは実に興味深いです。

医療現場のブレークスルーは「自由な研究」から偶然生まれる

基礎研究は、実際の医療現場に直結するものかというとそうではありません。もちろん将来的には何らかの形で世のためになってくれることを期待していますし、直結した研究も重要だと思いますが、研究とは本来、臨床応用や実用化とは関係なく、自由な発想・好奇心に基づいて行われるものです。近年で言えば、がん免疫療法や新型コロナウイルスのワクチンしかり、医療の現場における大きなブレークスルーは、そのような自由な研究から偶然生まれているのです。

メッセージメッセージ Message

偏差値だけで志望校を決める受験生、そして第一志望に届かなかった医学生が大学入学後もそれを引きずり、目の前の学問、学生生活に集中できない様子を目にすることがあります。勿体ないし、馬鹿らしいことといつも思います。結局のところ、臨床医であろうが研究者であろうが、卒業後は出身大学の偏差値など一切関係ありません。評価の対象となるのは実力のみです。進学した大学でどれだけ一生懸命取り組めるかが大事だと思います。

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