英語の正しい勉強法

リスニング

英語の正しい勉強法

最後にリスニングについて確認しておきましょう。同じ受動的な能力である「読む(リーディング)」と比較して「聞く(リスニング)」は、学習の効果を実感するまでに時間がかかるため、本腰を入れないまま高3を迎えてしまう受験生がたくさんいます。しかし共通テストのリーディングとリスニングはともに配点比率が1:1です。比率は大学ごとに変わることがあるので一概には言えませんが、それでもかつての入試よりリスニングの重要性は断然高くなっていると言えるでしょう。

リスニングは短期間に集中して英語の音声を聞けばできるようになる、といった類のものではありません。数ヵ月~年単位での長期的かつ計画的なトレーニングが必要になりますので、高3になる前から毎日の学習にリスニングの時間を組み込むようにしましょう。

リスニングの学習でまず意識したいのは「読んでわからない英文を正しく聞きとることはできない」ということです。目で見て自分のペースで内容が確認できるリーディングと、次から次へと一方通行で流れていく情報を耳でしか確認できないリスニングとでは、内容を理解するために頭にかかる負荷が全く異なります。文字であれ音声であれ英語は英語なのですから、まずはしっかりとした読解力が身についていないと、より瞬間的な情報処理が求められるリスニングにおいて、内容を正しく聞きとり理解することは到底望めません。ということは、ここでもやはり文法・語彙・構文の学力が基本となるわけです。この点について共通テストの問題を例にして考えてみましょう。

2021年 共通テスト リスニング 第1問 A

英語を聞き,それぞれの内容と最もよく合っているものを,四つの選択肢(①~④)のうちから一つずつ選びなさい。

スクリプト:
Question No.3 To start working in Hiroshima next week, Yuji moved from Chiba the day after graduation.

問3
① Yuji is living in Chiba.
② Yuji is studying in Chiba.
③ Yuji will begin his job next week.
④ Yuji will graduate next week.
2021年 共通テスト リスニング 第1問 B

英語を聞き,それぞれの内容と最もよく合っている絵を,四つの選択肢(①~④)のうちから一つずつ選びなさい。

問5

スクリプト:
Question No.5 Almost everyone at the bus stop is wearing a hat.
2021年 共通テスト リスニング 第1問 - 1 2021年 共通テスト リスニング 第1問 - 2 2021年 共通テスト リスニング 第1問 - 3 2021年 共通テスト リスニング 第1問 - 4

単語だけがわかっても問題は解けない

単語だけがわかっても問題は解けない

一つ目は英文を聞いてその内容に一致する英文を選ぶ問題で、二つ目は英文の内容に一致するイラストを選ぶ問題です。

一つ目の例においてTo startで始まっていますが、文法的な知識がしっかり身についている人は、この二語を聞いた時点で「おそらく『~するために』という目的の意味を表す副詞的用法の不定詞だろう」という予測を立てながら続きを聞くことができます。そして、Yuji movedという主語と動詞を聞きとった段階で、その予測が正しかったことを確認しながらさらに続きを聞き、全体の内容を正しく理解することができます。このように文法・構文の知識がしっかりしていることで、聞いた内容だけでなく、それを別の表現で言い換えた選択肢の内容も正しく理解することができるため、両者を紐づけることができるのです。いくら個々の単語を聞きとることができても、それを意味のある英文として取り込めないと問題を解くことはできません。二つ目の例も同様です。基本語彙であるalmostが副詞で「ほとんど」という意味を表すことを知っていれば、これが後ろのeveryoneを修飾していることがわかるので、①ではなく②が正解だと判断できます(副詞は本来名詞を修飾しませんが、everyoneはevery+oneであり、almostはこのeveryの部分を修飾しています)。このようにリスニングの英文を理解するための基礎は、リーディングと何ら変わりません。普遍的に英文を理解するためのツールである文法・語彙・構文の学習に力を入れましょう。

コラムコラム Column

「脳力」を鍛える音読

皆さんにも小学校の国語の授業で声を出して本文を読んだり、宿題で教科書の音読が出たりした経験があるかと思います。なぜこのように音読を重視するのでしょうか?
それには重大な根拠があるのです。実は、ただ黙読しているときと、音読しているときでは、脳の働き具合に大きな違いがあります。黙読しているときも音読しているときも、主に前頭前野(思考を司る)とウェルニッケ野(言語処理を司る)が活性化しますが、音読しているときの方がより活性化するのです。脳が活性化するということは、それだけ「脳力」が鍛えられているということです。さらに、例えば英語では、音読をすることで英文のリズムや構成に慣れることができ、読解力向上に非常に効果的です(ただし、文の構造や内容を理解してからという条件がつきます)。また音読によって、文章で出てきた単語・文法・構文の知識も実際に英語で使われる自然な形で身につけることができるので、聞きとる力、話す力、あるいは英作文の力の向上にも役に立つのです。もちろん、古文や漢文についても英語と同様、音読は知識の定着や読解力アップに非常に有効です。

長文を聞き続ける集中力が必要

さて、しっかりとした基礎力があってもそれだけでリスニングの力が右肩上がりで伸びていくということはありません。リスニングでは内容を聞き逃すと解答できなくなってしまうため、高い集中力を保ち続ける必要があります。また東大の二次試験や、共通テストでも後半の問題になるとかなり長い英文を聞きとるため、聞いた情報をしばらく頭の中に保持しておかないと設問に答えられなくなってしまいます。例えば次ページからの共通テスト第5問は、講義を聞きながらワークシートの空欄箇所を埋めつつ、全体の内容も覚えておかないといけないという点で高度なリスニングの力が求められます。音声を聞きとることで精一杯という状態ではこういった問題にうまく対応できないため、大量の英語を聞き続けることにへこたれない脳の体力を作っておく必要があります。そのためには、やはり普段からリスニングの学習を習慣化し、できるだけたくさんの音に触れておかなければなりません。ここで注意したいのは、漫然と英語の音声を聞く「聞き流し」や、何か別のことをしながらBGMのように音声を流しておく「ながら聞き」は、相当英語を聞きとれる人以外にはあまり効果が望めないため時間を浪費することになってしまう、ということです。リスニングの学習中は必ず音声を聞くことに集中しましょう。そして、自分が聞きとった音声が実際にはどういった内容であったのかをスクリプトと突き合わせて確認することで、少しずつリスニングの精度が上がっていきます。

先輩の体験談先輩の体験談

東京外国語大学国際社会学部 さん リスニングは一朝一夕では身につかないので早めの対策が必要です。私は中学レベルからスタートするリスニングのテキストを夏までにこなし、音声を真似てスクリプトを音読することにより、英語を聞きとる耳を鍛えることができました。聞きとれなかったところは何度も音読し、聞きとれるようになるまで繰り返しました。地味ですが日々の積み重ねでリスニングの力は伸ばせます。

まとめ まとめ Summary

聞きとりにくかったリスニング素材は、自分でもスクリプトを読んで声に出す学習を取り入れることをお勧めします。読んで音声を再生することによって音声の理解が促進され聞きとりやすくなり、聞きとった情報をより長い時間頭にとどめておくことが可能になるため、音声を聞きとることにも余裕を持てるようになっていきます。リスニングでは質と量の両面を意識した学習に取りくむようにしましょう。

2021年 共通テスト リスニング 第5問

最初に講義を聞き,問27から問32に答えなさい。次に続きを聞き,問33に答えなさい。状況・ワークシート,問い及び図表を読む時間が与えられた後,音声が流れます。

2021年 共通テスト リスニング 第5問 - 1 2021年 共通テスト リスニング 第5問 - 2

スクリプト:
Questions No.27 to 32
What is happiness? Can we be happy and promote sustainable development? Since 2012, the World Happiness Report has been issued by a United Nations organization to develop new approaches to economic sustainability for the sake of happiness and well-being. The reports show that Scandinavian countries are consistently ranked as the happiest societies on earth. But what makes them so happy? In Denmark, for example, leisure time is often spent with others. That kind of environment makes Danish people happy thanks to a tradition called “hygge,” spelled H-Y-G-G-E. Hygge means coziness or comfort and describes the feeling of being loved.

This word became well-known worldwide in 2016 as an interpretation of mindfulness or wellness. Now, hygge is at risk of being commercialized. But hygge is not about the material things we see in popular images like candlelit rooms and cozy bedrooms with hand-knit blankets. Real hygge happens anywhere ― in public or in private, indoors or outdoors, with or without candles. The main point of hygge is to live a life connected with loved ones while making ordinary essential tasks meaningful and joyful.

Perhaps Danish people are better at appreciating the small, “hygge” things in life because they have no worries about basic necessities. Danish people willingly pay from 30 to 50 percent of their income in tax. These high taxes pay for a good welfare system that provides free healthcare and education. Once basic needs are met, more money doesn’t guarantee more happiness. While money and material goods seem to be highly valued in some countries like the US, people in Denmark place more value on socializing. Nevertheless, Denmark has above-average productivity according to the OECD.

問27  ワークシートの空欄27に入れるのに最も適切なものを,四つの選択肢(①~④)のうちから一つ選びなさい。

  • a sustainable development goal beyond
  • a sustainable economy supporting
  • a sustainable natural environment for
  • a sustainable society challenging

問28 ~ 31  ワークシートの空欄2831に入れるのに最も適切なものを,六つの選択肢(①~⑥)のうちから一つずつ選びなさい。選択肢は2回以上使ってもかまいません。
① goods   ② relationships   ③ tasks
④ everywhere   ⑤ indoors   ⑥ outdoors

問32  講義の内容と一致するものはどれか。最も適切なものを,四つの選択肢(①~④)のうちから一つ選びなさい。32

  • Danish people are against high taxes to maintain a standard of living.
  • Danish people spend less money on basic needs than on socializing.
  • Danish people’s income is large enough to encourage a life of luxury.
  • Danish people’s welfare system allows them to live meaningful lives.

コラムコラム Column

「記憶力を高める」シリーズ その①
~記憶の三つの側面(覚える・蓄える・思い出す)~

記憶には三つの側面があります。まず、記憶したいことを「覚える」作業、覚えたことを脳に「蓄える」作業、そして覚えたことを「思い出す」作業の三つです。記憶力を高めることを考えるとき、どの側面を強化するかによって、異なるアプローチの仕方があります。もちろん、ベストなのは、三つの側面のそれぞれに働きかけるアプローチをすべて行うことです。

  • a.覚えること(「記憶」)
  • b.蓄えること(短期記憶から長期記憶へ移すこと。「貯蔵」)
  • c.思い出すこと(「想起、検索」)
    +繰り返し(「リハーサル」)
コラム イメージ

次回のコラムからは、記憶の三つの側面について、記憶力を高める効果的な方法を見ていきましょう。

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