地理の正しい勉強法

入試で必要とされる地理の学力

地理の正しい勉強法

地理は、暗記ではなく「地理的思考力が必要」とよく言われます。では地理的思考力とはどういった力なのでしょうか。また、一口に「地理的思考力」と言っても以下のパターンで必要な知識や思考力が異なります。A:共通テスト型、B:国公立型、C:私立型それぞれについて典型的な問題を見ながら、どのような対策が必要かイメージしていきましょう。

共通テスト型

ほぼ全ての問題で何かしらの図や資料が使われており、読解力・資料を通して考える力・判断力が必要です。問題例を見てみましょう。

問題例(共通テスト 2021年)
 各地の雨温図の特徴に影響を与える気候因子を確認するために,コハルさんの班は,仮想的な大陸と等高線および地点ア~カが描かれた次の資料1を先生から渡された。これらの地点から2地点を選択して雨温図を比較するとき,海からの距離による影響の違いが強く現れ,それ以外の気候因子の影響ができるだけ現れない組合せとして最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。 資料1 ① アとイ    ②イとウ    
③エとオ    ④オとカ

この問題は要約すると、「気候因子の中で、隔海度による影響の違いのみで雨温図を判断できる2地点の組合せ」が聞かれています。共通テストは問題文がかなり複雑なので、まず読解力が必要です。では2地点の組合せがどれか。答えは①です。アとイは同緯度に位置し、間には山地も見られず、高度も同じです。また、どちらも偏西風帯に位置しており、西の海洋から水蒸気が運ばれてくるという点も同じなので、隔海度による影響のみ考えれば良いとなります。カ・オ・エは、緯度は同じだがそれぞれ高度が異なる点、ウは大陸東岸に位置しているためモンスーンの影響を受けることと、山地の麓に位置しているため地形の影響も受ける点で不適当となります。

この問題は、「ここはCfb気候だ。ここはDf気候だ」というように、場所で暗記してしまっている人は解けないでしょう。普段から「なぜここはこういう気候になるのか。ここは暖流と偏西風の影響でCfb気候だ。ここは隔海度が大きく、暖流の影響をあまり受けないからDf気候だ。」というように、原理や背景知識をおさえながら場所を覚えることが重要です。これが地理的思考力を養います。また、この問題は地形性降雨の知識も関係しています。地形によって降水量が変わる可能性があるため、ウは不適当だなと判断できるからです。このように、複数の知識を、問題に合わせて組み合わせながら判断する必要があります。

今回は自然地理学の分野(気候)を例に挙げましたが、他にも産業であれば統計が出題されます。これも統計をただ暗記するのではなく、なぜこの国が上位にくるのかということを考え、理解することが重要です。また、民族分野では背景知識をおさえることも重要です。このように、最も重要なことは普段から正しい勉強ができているか、ということになります。原理や背景知識をおさえることを意識し、わからないところは先生に質問するようにしましょう。思考力が培われたら、過去問(センター試験含む)演習や予想問題による対策が効果的です。

国公立型

形式

「論述問題のみ」の大学は、一橋、阪大、筑波の3校(一橋、阪大はまれに記述問題出題)のみで、多くの大学は「選択問題&記述問題&論述問題融合型」です。記述問題は私立型のような穴埋め形式などで、用語や都市名などを答えさせる問題ですが、細かい知識が問われることは少ないと言えます。選択問題と論述問題は共通テスト型のように、図や資料が使われることが多いため、思考力が問われます。共通テストを受験しない人はいないはずなので、共通テスト対策が国公立二次対策に結びつきますが、当然論述の練習が必要になります。

問題例(東京大学 2018年)
二酸化炭素濃度が全体として増加しているのは,主に2つの人間活動によっている。どのような活動か,1行で述べなさい。※本来の問題は二酸化炭素濃度の資料があります。

文字数

旧帝大、一橋、筑波を分類すると以下のようになります。

「20字~50字程度」 京大
「30字~90字程度」 東大
「150字~200字程度」 一橋、阪大、九大(300字程度の場合もあり)
「400字」 筑波
「字数制限なし」 北大、名大


東大、京大は短くまとめる練習が必要となり、一橋や筑波などは加点ポイントをいかに盛り込むかが重要になってきます。

論述の対策方法

基本用語は「説明できるまで」見直す

難関大といっても、全てが難問ということはありません。まずは基本的な問題でしっかり得点することが重要です。また、論述の要素として基本用語を盛り込むことが多いため、しっかり練習しておきましょう。

例)楯状地について習った際、「楯状地とは何か。どのように形成されるのか。」といったことを説明できるようにする。

環境問題や社会問題、国際問題について、「原因」「現状」「対策」「今後すべきこと」などをまとめる

特に難関大では、現在起こっている様々な問題に関心をもっているかを確認するため、これらに関する問題が多く出題されます。

共通テストの演習問題なども、解きっぱなしではなく、根拠を説明できるまでやる

論述では根拠を書かせるものも多くあります。「論述問題集」ではなくても、普段から「論理的に説明する」ことを心がけていれば、既存のテキストでも十分に論述対策ができます。その上でステップアップとして本格的に論述問題集に手をつける場合は、必ず解答例だけではなく、「思考のプロセス」「書くべきポイント」などがしっかりと明記してあるものを選ぶようにしましょう。

私立型

資料を使い思考力を問う問題もあるため、普段から原理や背景知識をおさえる共通テスト対策のような勉強も必要です。しかし、私立型は「語句選択・記述」という形式が最も多いため、「語句や都市・地域名を覚えているか」ということが最も重要です。一問一答や問題集を使って、知識を覚えているか、正しく書けるかの練習が必要です。

大学によっては教科書の内容を超えたかなり細かい知識まで聞かれます。例えば馴染みが薄い国の首都や、世界遺産の知識などです。志望大学の過去問を早めに確認し、どういった知識が聞かれているかを確認しましょう。そのうえで、首都が聞かれているのであれば、普段から国の位置を確認する際、首都の位置・名前も確認するといった作業が必要です。

ただし、教科書の内容を超えた問題で得点しようという意識は危険です。まずは教科書・テキストや一問一答などに載っている知識を覚え、正確に書けるようにすること。これだけで合格点は取れます。プラスで早めに傾向をおさえて、細かい知識を意識した勉強をすると地理で差をつけることができるでしょう。

また、大学・学部・日程によっては論述形式を出題するところもあります。慶應・上智・MARCH・関関同立あたりの難関大は出題するところが多いと言えます。早稲田は論述の出題はありません。上智が100字を超えることがありますが、その他はだいたい30字未満と短文です。こちらも自分が志望する大学・学部の過去問を早めに確認し、論述の有無を把握しましょう。

問題例(慶應義塾大学 商学部 2020年)
 以下の文章の空欄(あ)~(え)にあてはまる最も適切な語句を,(あ)と(い)はそれぞれ漢字2字,(う)は漢字4字,(え)は漢字3字で答えなさい。
※以下の文章は省略

地理学習のコツ

地理の学習で重要なことは、「原理」「位置」「比較」の三点を意識することです。それぞれ見ていきましょう。

原理

共通テスト型の説明にも記載しましたが、地理は思考力が問われる科目です。普段から「なぜそうなるのか」「この国は統計でなぜ上位にくるのか」といった、原理・背景知識をおさえることを意識しましょう。教科書・テキストを読むだけでは理解できないこともあるはずです。普段の授業で先生が話す内容をしっかり吸収することを意識し、わからないところは先生に質問することで正しく理解することを心がけましょう。

位置

地理は場所が聞かれることも多いため、学習に「地図帳」は不可欠です。ぱっと位置が思いつかない地名や都市名が出てきたら、すぐ地図帳で調べるという習慣をつけるようにしましょう。

比較

共通テストでは「〇〇さんはイギリスとドイツを比較して、次の資料を得た~」や、論述では「A国とB国のグラフを比較し、読みとれることを述べよ」というように、比較する問題も多く出題されます。地理は「系統地理」で分野ごとに学習し、「地誌」で地域ごとに整理し、掘り下げるという進め方が一般的です。この「地誌」学習の際、地域ごと・国ごとの比較を意識するようにしましょう。

例)アフリカは乾燥気候の割合が高く、南米は熱帯気候の割合が高いから、森林率に大きな違いが見られる。ただし、アフリカの中でも中央アフリカは熱帯気候が広がっているため、森林率が高い。

最後に、地理だけでなく他の科目にも言えることですが、知識をつけることは当然として、演習を通して使えるようにすることが重要です。「知っている・覚えている」と「使える・解ける」は別物ですので、インプットで満足するのではなく、問題集や過去問集を使いアウトプットの作業をしっかり行いましょう。

コラムコラム Column

「記憶力を高める」シリーズ その④ 
~知識の高度化~

長期記憶の網が情報を捕らえやすくするためには、コラムその③で紹介したアプローチのほかに、網を大きくしたり、網の目を細かくしたりしていくことが考えられます。網が小さいと捕らえられる情報は少ないし、網の目が粗いと、網の目を素通りして、記憶にはとどまりません。

まず、網を大きくするというのは、要するに様々な分野の幅広い知識をもつことです。皆さんは受験勉強でいろいろな科目を学習していますが、勉強で得た知識はそのまま、長期記憶の網を大きくすることに貢献します。新たな知識で網が広がり次の新たな知識を捕らえることに役立つ、つまり勉強すればするほど、さらに勉強の効率も効果も高まっていくのです。

次に、網の目を細かくすることですが、これは新たに覚えた知識をすでに覚えた知識と関係づけていくことと言えます。例えば、コラムその③の図に、同時期の国際情勢として、カール5世とフランス王フランソワ1世とのイタリアを巡る争いや、オスマン帝国のスレイマン1世との抗争を足していくと、複合的な時代の網が完成します。このように、一つの事柄を他の多くの事柄と関係づけできれば、それだけ網の目は細かくなります。当然、よく勉強して知識が多い人ほど、関係づけはどんどん容易になります。このようにして、事柄同士の繋がりがいろいろな方向に伸びて、知識のネットワークがより緻密になればなるほど、網の精度は高まるのです。これを「知識の高度化」と言います。

ここから一つ大切なことがわかります。いろいろなことを勉強して知識を増やしていくほど、さらに新たな知識が頭に入りやすくなるのだということです。例えば、コラムその②の「あまり回数をこなしていないように見えるのにできてしまう」人も、よく勉強して長期記憶の網が大きく、緻密だからそれができるのだと言えます。

さらに言うと、いま受験勉強で一所懸命に頑張ることは、その後の人生においても新しい知識を身につけることを容易にして、豊かな人生を送ることに大いに役立つのです。そしてこのことは、入試が終わってもぜひ覚えておいてほしいことです。人生は一生、新たな勉強の連続です。皆さんの知識の網を、大学生そして社会人になっても一生涯、より大きくより緻密にすることを心がけましょう。

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