「スクールカースト」の正体とは?
教室の“もやもや”を「言葉」にする教育社会学

東京電機大学 理工学部 教養教育センター 准教授
鈴木 翔 先生


教室で感じた「なぜあの人が?」という違和感

「なぜあの人は発言力があるのだろう」「なんとなく上下関係を感じる」——。私は高校時代、教室内での友人関係や自分の立場について、こうした言葉にできない“もやもや感”を抱えながら学校生活を送っていました。そして高校卒業後、友人たちと当時の話をすると、「当時は当たり前だと思っていたけれど不思議だったよね」と盛り上がり、自分だけでなく多くの人が同じような違和感を抱えていたことに気づきました。その後、大学で教育学を学び始めると、いじめなどの深刻な問題は多く研究されているのに、その手前にある「いじめとは言えないけれど居心地が悪い」「見えにくい力関係」といった生徒たちの日常的な感覚は、学術的にほとんど明らかにされていないと知ったのです。そこから、現場のリアルな実態をデータに基づいて明らかにしたいと思い、研究の道に進みました。

教室の力関係を「思い込み」ではなくデータで解明

現在は教育社会学を専門とし、中高生の友だち関係や恋愛、いじめなど、学校内の人間関係について研究しています。特に力を入れているのは「スクールカースト」と呼ばれる現象です。学校には、成績や部活の実績とは別に、「なんとなく人気がある」「目立たない」といった、はっきり言葉にはされないけれど皆が感じている力関係が存在します。私は、多くの中高生へのアンケートやインタビューなどを通して集めたデータを分析し、そのような人間関係がどう作られ、学校生活にどんな影響を与えているのか、「思い込み」ではなく「客観的な事実」として明らかにしようとしています。それらの仕組みが理解できれば、学校をより過ごしやすい場所にするためのヒントも見えてきます。そして、ここで得られた知見を教育現場や社会に役立てていきたいと考えています。

うまく説明できない気持ちを言葉にする面白さ

研究の最大の魅力は、多くの人が経験しているのにうまく説明できない気持ちを「言葉」にできることです。見過ごされがちな感覚を整理し、たくさんの人と共有できたときには大きなやりがいを感じます。また、データと向き合う中で「きっとこうだろう」という予想が覆るなど、新しい発見に出会えるのも面白いところです。友人関係の悩みは男女でも違いますし、今の時代はSNSの存在など、私が中高生だった頃とは環境も大きく変化しています。リアルな今の学校生活を知り、「学校」という言葉では語りきれない多様な世界に触れられるのはとても刺激的です。

日常の小さな「なぜ?」を大切に

大学では、高校以上に「物事をどう解釈するか」が問われますが、同じデータや出来事を見ても、その人がもつ知識や経験によって解釈は一人ひとり異なってきます。つまり「学ぶ」とは、ただ知識を増やすだけでなく、物事を解釈する「視点」を増やすことでもあります。受験勉強をしていると「将来何の役に立つのか」と悩むかもしれませんが、それも、自分なりの視点で世界を理解し、物事を判断する土台を作る大切な機会なのです。
それと同時に、ぜひ大切にしてほしいのが「疑問を持つこと」です。「なぜこんなルールがあるのだろう」といった日常の違和感を、「そういうものだ」と片づけずに自分の中にしまっておいてください。私自身がそうだったように、その疑問が将来の大きな研究テーマに繋がることも少なくありません。大学には「本当にそうだろうか?」と立ち止まって考えられる人に来てほしいと思っています。教師を目指す人はもちろん、「学校にはこんな問題があるのでは」と物申したい人も大歓迎です。当たり前を問い直す学びを、ぜひ一緒に楽しみましょう。

鈴木先生からのメッセージ

受験生の皆さんは今、模試の結果に一喜一憂したり、将来に不安を感じたりと、とても大変な時期を過ごしていると思います。教育社会学を研究している立場から言えば、どの大学に進学するかは決して小さな問題ではありません。ですが同時に、大学だけですべてが決まるわけでもありません。同じ大学に入っても、そこでどう学び、誰と出会うかによって人生は大きく変わります。だからこそ、合格だけを目標にするのではなく、「自分は大学で何を学びたいのか」「どのような人になりたいのか」をじっくり考えてほしいと思います。
大学は答えを教わる場所ではなく、自分なりの「問い」を見つけ、考え続ける場所です。皆さんが納得のいく進路を選び取れることを、心から応援しています。

(取材日:2026年5月)

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