観光の力で環境と文化を未来へつなぐ
―― 日本茶で見つめる持続可能な地域資源マネジメント
環境問題の解決策と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
エコな最新技術や、法整備などを想像する人が多いかもしれません。しかし、そこに全く別のアプローチを試みる先生がいらっしゃいます。「観光の力を使って、環境を良くすることはできないか?」――そんなユニークな視点から環境問題に取り組む山本先生にお話を伺いました。
京都産業大学
文化学部 文化観光学科 教授
山本 芳華 先生
経済、環境、文化、そして観光
すべてをつなぐ「日本茶」の役割とは?
――先生の研究テーマは「観光」と「環境」だと伺いました。この2つが、どう結びつくのでしょうか?
私は「観光の力を使って、環境を良くすることはできないか?」ということを探っています。子どもや孫の世代に、今よりもっと良い環境を引き継ぐにはどうすれば良いかを真剣に考えています。
――「観光の力で環境を良くする」ですか!ぜひ具体的な例を教えてください。
最近は、私たちの生活に身近な食文化の1つである「お茶」に注目しています。お茶を通して、地域が抱える問題を観光の面から解決できないか考えています。
――「お茶」というのは、日本茶のことですか?
そうです。お茶は日本を代表する飲み物であると同時に、山間部で栽培されている重要な「農作物」です。つまり、「お茶」を守ることは、その地域の自然環境と経済を守ることにつながるんですよ。
――なるほど!お茶畑の風景や、お茶の文化は観光客にとっても魅力的ですよね。
そのとおりです。お茶は、茶道など日本文化の根幹でもあります。ですから私は、ただ地域を経済的に豊かにするだけでなく、伝統文化を未来へ残したり、観光資源として地域を盛り上げたり、日本茶がどんな役割を果たせるのかを考えているんです。
――研究のために、お茶畑に出向くこともあるのでしょうか?
ありますよ。学生たちと一緒に茶摘みを体験して、観光の新しいあり方を考えたり、お茶に興味のある人にアンケート調査を行ったりします。あとは、小中学校へ出向いて、子どもたちが急須でお茶を入れる体験授業に参加して調査を行ったりしています。
――学生さんと一緒に活動されることも多いのですね。
ええ。学生にとっても、日本茶の将来や地域のあり方を自分ごととして考える、素敵なきっかけになっているのではないかと思っています。
法律学から環境マネジメントへ
富士山で直面した地球温暖化の危機
――そもそも、先生がこうした分野に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
実は私、大学1年生の時は法律を学んでいたんです。でも、理学部の生態学研究室でアルバイトもしていて、そのときの経験が人生の転機になりました。
――いったい何があったのでしょうか?
富士山の調査に連れて行ってもらったんです。そこで、地球温暖化の影響で高山植物が絶滅の危機にあるという事実を目の当たりにしました。
――それはショックでしたよね…。
はい。当時はまだ行政や企業も、地球温暖化の危機感をあまり持っていない時代でした。そこで、持続可能な社会づくりを目指す「環境マネジメント」を文理の枠を超えて学ぶことに決めたんです。
歴史と文化が詰まった京都をフィールドに
ワンキャンパスが叶える文理融合の学び
――先生のいらっしゃる大学は、文理の枠を超えた交流が盛んと聞きます。
そうですね。分野を超えた交流が日常的に生まれています。授業はもちろん、サークル活動や食堂での何気ない会話の中で、文系と理系の学生が自然と混ざり合います。
――文系も理系もキャンパスが一緒なんですね。
はい。同じ敷地内に、すべての学部学科が集まっています。他学部の授業も自由に受けられる工夫がされているので、自分の専門分野にとらわれない融合的な学びができる環境が整っています。
――そして「京都」という歴史と文化が詰まったロケーションも良いですよね。
そうなんです。地の利を活かして、京都のまちに息づいた文化を体験することによって、他にはない豊かなフィールドワークの学びを実現しています。
――例えば、どんな学びがありますか?
すぐ近くに世界遺産の上賀茂神社がありますが、源氏物語にも登場する「葵祭」を授業の一環として見学したり、ゼミによっては祇園祭の運営に参画したりすることもあります。
――それはとても貴重な経験ですね。先生のゼミは、お茶と観光がテーマでしたね。
はい。様々な産地のお茶を飲み比べながら、地域や観光のあり方を議論したり、自分たちで企画した宇治のツアープランを実践してみたりとアクティブに京都を満喫しています。
――楽しそうですね。学生たちはどんな雰囲気でしょうか?
一言でいうと「和やか」ですね。学生同士、互いに自由に話ができるような雰囲気を大切にしています。一緒にご飯を食べに行ったり、遊びに行ったり、授業外でも仲が良さそうですよ。
あらゆる業界で評価される教養
広がる将来の選択肢
――みなさん、卒業後はどのような道に進まれるのでしょうか?
本当に多種多様で、ほぼすべての業種にまたがっていると言っても過言ではありません。ホテル、旅行代理店、航空系はもちろん、大手メーカー、金融、ITなど、自分の興味関心に合わせて幅広い業界へ就職していますね。
――そんなに幅広い業界で活躍されているんですね!
はい。大学の学びを通して身につけた「幅広い教養」や「人間力」が、さまざまな企業から高く評価されているようです。就職にはかなり強い学部だと言えますよ。一方で、一般的な企業への就職だけでなく、日本文化を直接受け継ぐ道へ進む学生も少なくありません。
――日本文化への学びを深める中で、そういう想いが芽生えるのでしょうね。
ええ。例えばある学生は、京都・祇園の伝統芸能の歴史なども学ぶことができるニッチな授業『花街文化論』という授業を受けたことがきっかけとなり、卒業後も京都の伝統芸能を支える重要な人材として活躍しているんですよ。
暗記や修行に思える受験勉強も
社会に出てから輝きをもって役立つ
――大学での学びが将来につながる、素晴らしいですね。ところで、高校での学びは、大学やその後の人生につながっていくと思われますか?
大いに思います。ただ、勉強している当時はそれがわかりにくくて、「将来どこで使うんだろう?」と、単なる暗記や修行のように感じていましたけどね。
――今は、役に立ったと感じていらっしゃる、ということですね。
私は環境や文化などさまざまな角度からアプローチする研究をしているため、いろいろな分野の専門家と仕事をします。その時、高校で学んだ歴史や古文、数学、物理、化学などの基礎知識が、会話の「共通言語」として本当に大切になるんです。
――なるほど!コミュニケーションをとるための土台になるのですね。
その通りです。当時の勉強が、社会に出てから輝きをもって役立っていると実感しています。今、高校生に戻れるなら、選択していなかった科目も全部学び直したいくらいですよ。
――先生ご自身が受験生時代に実践していた、おすすめの勉強法はありますか?
「早起き学習」ですね。「みんなが寝ている間に自分は頑張っているぞ」というちょっとした優越感と安心感が得られます。受験期の焦りや不安をうまくコントロールするのにお勧めです。
――模試などで思うような結果が出なかったとき、どう乗り越えれば良いでしょうか?
決して諦めないことですね。落ち込むのは人間だから仕方ありませんが、ちょっと客観的に今の自分の点数を受け止めて「じゃあ次にどう動くか」を冷静に分析して、足を前に進めることが大切です。
――最後に、受験勉強を頑張っている高校生へ応援メッセージをお願いします!
「大学に入った後の自分」や「もっと先のなりたい自分」に思いを馳せながら生活してみてください。日々の生活の中で、様々な学びや世界に触れ、自分が深く掘り下げたいと思えるテーマを見つけてほしいと思います。それが大学受験へのモチベーションにもなり、みなさんの将来の道を大きく開いてくれるはずです。
身近な「日本茶」を入り口に、観光の力で自然環境と伝統文化を未来へつなぐ先生の研究。一見結びつかないようなテーマでも、視点を変えれば新しい解決策が見えてくることがわかりましたね。文系や理系といった枠にとらわれず、多角的な視点で社会課題を解決していく。そんな未来を創るためのヒントが、皆さんが今向き合っている教科書の中にも隠されているかもしれません。 br> (取材日:2026年9月)
京都産業大学 文化学部 文化観光学科
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/fcsi/bunkakankou/
京都産業大学 山本 芳華先生
https://www.kyoto-su.ac.jp/professors/fcsi/fcsi-b/yamamoto-yoshika.html









