宇宙で深刻な「ゴミ問題」に立ち向かえ

九州大学 工学部 機械航空工学科 教授
花田 俊也 先生


危険!宇宙の「ゴミ問題」

「宇宙ゴミ」とは、人工衛星を宇宙へ運んだあとのロケットや、運用期間が終わった人工衛星など、宇宙空間にあるゴミのことです。また、燃料が余ったまま捨てられたロケットが爆発したり宇宙ゴミ同士が衝突することで、細かい破片が増えていきます。そういったものが現在23,000個もあると言われています。 宇宙ゴミの一番の問題は、数が増えることで衝突しやすくなり、衝突することでさらに増えていくことです。高校の「第一宇宙速度」で習うように、人工衛星は7.9km/秒で周回しています。そこに同じく7.9 km/秒で移動する宇宙ゴミが衝突したら約16km/秒の衝撃となります。仮に直径1cmのアルミ合金球(質量約1.4g)が約16㎞/秒で衝突すると考えましょう。これはボーリングの球(約14ポンド)が時速約860㎞であなたにぶつかってくる衝撃と同じです。
すると、とんでもない事故になります。 また、宇宙ゴミは私たちにも危険を及ぼすことがあります。宇宙空間から落ちてきたゴミのほとんどは大気層で燃えてなくなりますが、まれに燃え残って地上に落ちてくることもあります。中にはロケットの燃料タンクが大きなサイズのまま落ちてくることも。それがもし人口密度の高いところに落ちたら大変なことになります。

100年後、200年後の宇宙をシミュレーションする

宇宙ゴミ同士が衝突して増えていく「ケスラーシンドローム」という現象があります。大切なのは、それが実際に起こっているかを見極めること。そして、どのように宇宙ゴミを減らしていけるかをシミュレーションすることです。この研究には様々な学問が必要です。例えば、宇宙ゴミが衝突する時にどんな破片がどれくらい出るかモデル化するには「破壊工学」、破片が衝突する確率を出す「統計学」、さらに破片は軌道に乗って地球の周りを回るため「軌道力学」の知識も必要になります。皆さんが高校の物理で習う「ケプラーの法則」「ニュートン力学」「万有引力の法則」、数学で習う「二次曲線」の知識なども応用しています。そうした学問を組み合わせて、100年後、200年後の宇宙をシミュレーションしていくわけです。まだ実現には至りませんが、宇宙ゴミを除去するために様々な方法が考えられています。例えばJAXAが提案しているのは「導電性テザー」という電流を流すことでローレンツ力を発生させ、その力によって宇宙ゴミの軌道を下げていき大気圏で燃やす方法です。また、大量の宇宙ゴミを除去していくためには、まずは近いうちに衝突しそうなものをランクづけし、そこから対応していかなければなりません。除去するための燃料を節約しながら効果を最大限にする方法も考える必要があります。そうしたことがこの分野のこれからの課題になります。

花田先生からのメッセージ

答えがあるものに対して機械的に解く訓練しかしていないと大学に入って困ります。学問で大切なのは、答えに到達することよりも、それまでにどう考えたかなので、考える癖をつけてほしいです。また、自分がやりたい分野とかけ離れていることでも学んでほしいです。それがいつフィードバックされるかわかりませんが、学んで損することはないと思います。私自身そういう経験をしています。例えば、医学分野の技術を利用したらうまくいったとか。自分の直面する課題に対して、何がひも解くものになるかはわかりません。だからこそ、どんなことでも貪欲に学んでほしいです。

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