おにぎりが「握るもの」から「買うもの」へ
身近な流通の変化から、都市の未来を描き出す

関西大学 文学部 教授
土屋 純 先生


コンビニ、巨大モール、ネット通販
流通産業の発展と都市構造の変化を追う

私は、日本やアジアにおけるコンビニやショッピングセンターなどの流通産業の発展に注目し、各国の消費生活や都市構造の変容について研究しています。
コンビニなどの流通産業は、高度な情報システムの活用だけでなく、効率的な物流システムの構築によって、私たちに便利なお店を提供してくれています。日本では、コンビニだけでなくショッピングセンターやネット通販など、次から次へと新しい流通産業が登場してきました。こうした流通産業の成長によって、大都市への機能集中や郊外ロードサイドの成長といった都市構造の変化が生じました。その結果、地方都市の百貨店や中心商店街が衰退してしまったという側面もあります。こうした都市構造の変容は、アジアの大都市でも生じています。例えば、インドのデリー首都圏では、郊外に大規模なショッピングモールが建設されるようになり、豊かになったインド人が訪れています。
このように最新の流通現場を観察し、日本やアジアの現在を追いかけ、未来を想像しています。

変わる家族の食生活、消えゆく身近な商店

私が流通産業に興味を持ったのには、自身の生い立ちが大きく関わっています。
私は群馬県の農村で生まれ育ったのですが、小学校低学年の時にはスーパーが、中学生の時にはコンビニが自宅近くにできました。我が家では、「おにぎりは握るものだ」と言っていた祖母が、コンビニでおにぎりを買うようになりました。こうした新しい流通が身近になったことで、家族の食生活が変わるだけでなく、身近な文房具店、駄菓子屋、鮮魚店などが姿を消していきました。このように身近な地域で生活が変化しているのを体感していたので、自然と流通産業に興味を持っていました。その後、大学生になり地理学を専攻して都市地理学や経済地理学を学んでいく中で、自分自身の関心を研究テーマに繋げられることに気づきました。そして大学での卒業論文研究から、流通産業の発展と都市構造の変容との関わりを研究するようになりました。

流通産業を考えることは、日本の未来を考えること

私の研究テーマは身近な経済や社会に関連することなので、多くの学生が講義内容に興味を持ってくれます。世代の違う大学生と興味や関心を共有でき、さまざまな問題について議論できることがとても楽しいです。そして、日本の未来を考える上で流通産業が重要である、という事実は研究の大きなやりがいになっています。人口減少、高齢化が進んでいる日本では、持続可能な経済・社会を構築しなければなりません。そのためには、交通弱者である高齢者を含めて、多くの日本人が安心して生活物資を購入できる仕組みが必要です。例えば、若い世代には当たり前になったネット通販の利用は、はたして高齢者にまで広がっていくのでしょうか。これからも早いスピードで変化していく流通産業を、しっかりと見つめていきたいと考えています。

アンテナを張り巡らせ、主体的なフィールドワーカーになろう

高校生の皆さんには、今のうちから様々な情報を受信できるアンテナ(感性)を身につけてほしいです。日々の生活の中で、身近な経済や社会、歴史や文化に興味・関心を持つことがその第一歩です。大学時代は自由な時間に満ちています。その時間を使って色々なことにチャレンジし、新しい可能性を見出していくには、このアンテナが欠かせません。
関西大学 文学部 世界史・地理学専修 地理学コースでは、日本から世界へと地理学的な知識を体得し、ローカルな地域から経済や社会の変貌について考察していきます。その際、実践的な学びとしてフィールドワークを重視しており、様々な場所に出かけ、現地で調査を実施し、主体的にデータを収集していきます。そのオリジナルなデータを元に研究していく能力を養成しています。だからこそ、現場に出かけていくことに興味がある、行動力のある学生の入学を待っています。ぜひ一緒に好奇心を育みましょう。現場から問題意識を見出せるフィールドワーカーを目指しませんか!

土屋先生からのメッセージ

大学受験のために学習を積み重ねていくことで、考える力が身につくと思います。現在はAIが発達していて、考えなくても答えが導き出せる時代になりました。しかし、考えない人は、複雑な現代社会において主体的に生きていくことができないでしょう。考えない人は、国や企業、そしてコンピュータやAIに従属して生きていくしかないと思います。
大学受験を通して考える力を身につけ、自分自身で未来を切り拓いていける人になってほしいと願っています。

(取材日:2026年7月)

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