見えない宇宙の謎
「ダークマター」に、手作り装置で挑む!
岡山大学 環境生命自然科学学域 准教授
安達 俊介 先生
宇宙の4分の1を占めるのに正体不明
私は「ダークマター」という、正体不明の物質を研究しています。宇宙全体のエネルギーの約4分の1を占めると考えられるのに、それが何でできているのか、人類はまだ知りません。ダークマターは光を出さないため直接は見えません。見えないのに、なぜ存在がわかるのでしょうか。それは、星や銀河の動きが、目に見える物質だけでは説明できないからです。ダークマターが周りのものを引き寄せる「万有引力」の影響をたどることで、私たちの銀河を包み込むように広がっていることがわかってきました。やっかいなのは、万有引力以外の反応が何も見つかっていないことです。今この瞬間も、私たちの体を通り抜けているはずなのに全く気づけません。そこで、「ダークマターの正体はこういう粒子ではないか」という予想を手がかりに、ごくわずかに起こすかもしれない別の反応をねらって探しています。
世界初!「電波」でダークマターを探す
私が注目する未発見の粒子「ダークフォトン」は、フォトン(光の粒子)とだけ極微弱に反応すると予想されています。もしこれがダークマターの正体なら、物理学の理論上「金属の表面」というありふれた場所で、光に姿を変えて出てきます。ここでいう光とは、電波やX線といった光(電磁波)の仲間も含みます。そして、出てくる光のエネルギー(周波数)は、元の粒子の質量と比例しますから、軽いダークマターは、エネルギーの低い電波を出すと考えられます。そこで私たちは、天文観測の電波受信技術を応用し、ダークマター探索用の受信機を自分たちで設計・開発しました。受信機を用いた方法で、世界で初めてダークフォトンを探し、世界最高感度に到達しています。まだ発見には至っていませんが、ねらう周波数を変えながら、誰も探したことのないダークマターの質量範囲を一つひとつ塗りつぶしています。
人類最初の発見者になるというロマン
研究の一番の魅力は、見えないものを「自分の手で作った装置」で捉えるところです。姿が見えなくても確実に飛び交っているものを、1から設計した装置で信号としてすくい上げ、「確かにここにある」と示す瞬間の面白さは他にありません。私たちの実験は小規模ですが、実はそれが大きな強みです。巨大実験と違い、自分のアイデア1つで装置の性能を上げ、工夫がそのまま結果に直結する手応えがあります。ダークマターの正体を突き止めることは、「宇宙が何でできているのか」という問いに答えることでもあります。まだ誰も見たことのないものを、人類で最初に見るかもしれないというロマンに溢れています。
素粒子の世界に衝撃を受けた高校時代
私がこの分野の研究を始めたのは、高校時代に「スーパーカミオカンデ」という岐阜県にある巨大実験施設の話を聞いたことがきっかけです。宇宙から飛んでくる陽子が地球の大気とぶつかって、全く別の粒子に変わっていく――。学校の化学では「原子は他のものに変わらない」と習っていたので、粒子が次々と別の粒子に姿を変える素粒子の世界は、私にとって非常に衝撃的でした。それ以来、目に見えない素粒子を、実験装置を工夫して「見る」ことに興味を持ち続けています。今のダークマター研究も、見えないものを何とかして捉えようとしているという意味で、しっかりとつながっています。
ネジ1本から自分で揃える「何でも屋」になろう
実験系の研究では、本当に様々なことをこなす必要があります。実験に使う装置は誰かが持ってきてくれるわけではなく、ネジ1本から自分で揃えます。泥臭い手作業も数多くあり、いわば「何でも屋」になれることが研究者には欠かせません。まだ誰もやったことのない尖ったことに挑むため、既製品は存在しません。装置づくりからデータの解析、結果の解釈まで、やるべきことは多岐にわたります。もちろん、その中に苦手な分野もあるでしょう。大切なのは、苦手だからと投げ出さずに、自分なりのやり方で少しずつでも前へ進める方法を考え、手を動かすことです。そういう力を持った人と一緒に研究ができたら嬉しいです。
受験勉強は「計画力」の第一歩
高校までは自分で計画を立てて物事を進める機会は少なく、受験勉強はそれを本格的に行う最初の場面です。遊びや休みも含めて計画し、実行し、どこまでできたかを振り返って計画を立て直す。この「計画・実行・振り返り」のサイクルこそが重要です。研究生活も、実験だけでなく社会へ伝える仕事や事務手続きなど、自分のやりたいこと以外にも計画的に取り組む力が不可欠です。私自身、高校時代は現代文が苦手でしたが、目をそらさずに取り組んだ経験が今に活きています。計画力の土台は、受験勉強にどう向き合ったかで作られるのだと思います。
安達先生からのメッセージ
受験生のみなさんに一番伝えたいのは、「今の過ごし方が今後を決める」ということです。うまくいかなかったときこそ、自分は何が苦手なのかが見えてきます。それは計画という比較対象がなければ見えてこないものです。限られた時間、ひいては限られた人生の中で、自分の手で何を新しく見つけられるのか。それは計画なしには進められず、本質的に受験期の過ごし方と何も変わりません。大学には、まだ誰も答えを知らない問いがいくらでもあります。みなさんがその世界に来てくれる日を、楽しみに待っています。
岡山大学大学院 環境生命自然科学研究科
https://www.elst.okayama-u.ac.jp/
岡山大学 宇宙物理学研究室 – 石野・安達 研究室
https://www.physics.okayama-u.ac.jp/ishino-lab/details/wordpress/product/web/
岡山大学 安達 俊介先生
https://soran.cc.okayama-u.ac.jp/html/d26fe59dcd4f14de39313666b67f9f5f_ja.html









