患者の人生を取り戻せ!
「痛み」のメカニズム解明と治療に挑む

兵庫医科大学 学長補佐・兵庫医科大学病院 ペインクリニック部 教授(部長)
髙雄 由美子 先生


約3千万の国民が慢性的な「痛み」を持っている

私は、痛みの治療を専門におこなう「ペインクリニック」に専従しています。よって研究は、「痛み」に関する内容となります。日本人の身体の症状を調べた厚労省の研究では、もっとも日本人が困っている症状は、腰痛、肩こり、頭痛などの痛みでした。また、何らかの慢性疼痛を持っている国民は、約3千万人にも及ぶことがわかっています。このように多くの人が苦しんでいるにも関わらず、痛みのメカニズムはまだその全てが解明されているわけではありません。というのも、痛みは末梢神経だけではなく、脊髄や脳にも多くの変化をもたらし、心にも大きく影響するからです。明らかな原因がないにもかかわらず、全身に痛みを感じることもあります。
私たちは、治療の困難な慢性疼痛患者に対して、複数の職種でタッグを組み、チームで治療にあたっています。患者の心理的な検査の解析や、バーチャルリアリティを用いたリハビリテーションなども取り入れ、研究を進めています。また、痛みの治療の1つに「脊髄電気刺激療法」というものがありますが、これは脊髄の近くに細い電極を留置し、電気刺激をすることにより痛みをとる特殊な方法です。当院は脊髄電気刺激療法を行う日本の代表的な施設で、臨床研究や基礎研究に取り組んでいます。

麻酔科学を学びペインクリニックの道へ

子どもの頃から「自分の力で人生を切り開きたい」という思いがありました。将来の職業について考えた時に、父親が外科医であったこともあり、医師を目指しました。医学部卒業後は、麻酔科学の道を選びました。
麻酔科の大事な仕事に周術期の麻酔管理がありますが、これ以外にもペインクリニックや集中治療、緩和ケア、救急医療など、その仕事は多岐にわたります。私は、麻酔科でいろいろな研修を積んだ後に、自分のスペシャリティーとしてペインクリニックを選びました。ペインクリニックでは、痛みのある患者さんたちと向き合い、治療を進めていきます。痛みは、さまざまな要因が絡み合う難しい病態で、患者さんごとに治療が異なることも多いです。ですが、その治療によって患者さんの人生を変えることもできます。だからこそ、やりがいがあるのではないかと思います。

常に学び続け、進化し続ける面白さ

医師の仕事の素晴らしいところは、自分のしている仕事が人の役に立っていると感じられるところです。痛みに苦しんでいる患者さんの治療を行い、その患者さんが人生を取り戻していく姿を見ると、世の中に貢献できたと感じます。また、医学の進歩は日進月歩で、日々、新しい発見があり、新しい治療法も開発されます。ですので、医師になってからも常に勉強し努力する必要があります。社会人になっても勉強するのは、しんどいと思われるかもしれませんが、逆にいうと、年齢を重ねても常に新しい発見があり、自分を向上させる機会があり、自分を進化させることができます。私が研究している「痛み」は、人間の根源的なものであるにも関わらず、いまだにそのメカニズムはすべて解明されていません。「痛み」の研究は医学の中でも、これからも新しい知見や治療がでてくる面白い分野です。

髙雄先生からのメッセージ

みなさんは大学受験のために頑張っておられると思いますが、大学入学は長い人生の幕開けに過ぎません。われわれは、人生80年90年が当たり前となった時代に生きています。今後自分の人生をどう生きたいか、何をしたいかを決めてゆくことも重要で、大学入試もその大事な道のりの1つです。しかし本当の勝負が始まるのは、社会に出て自分の力で生き始めてからです。医師の場合は国家試験に合格してからとなりますが、学生時代から将来の自分に向けて努力することは無駄ではありませんし、努力したことは、まわりまわって将来の自分に返ってきます。時間はあっという間に過ぎます。人生は1回しかありません。最期に振り返って、思い切り生きた、自分の人生はいい人生であったと思えるように精一杯頑張ってほしいと思います。チャレンジしてください。たとえ失敗したとしても、日本ではそれで命を取られるわけでもありません。次のチャレンジをすればいいだけです。みなさんは若いし、まだまだ可能性があります。自分の人生をしっかり切り開いてください。

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