発掘調査で「未知」に挑む!
韓国の遺跡から探る、弥生〜古墳時代の国際交流
関西大学 文学部 教授
井上 主税 先生
海を渡った「日本のモノ」が語る、古代の国際関係
私の専門は、遺跡から出土した資料をもとに歴史を考える考古学です。なかでも、弥生時代から古墳時代における朝鮮半島の諸勢力と日本との交流関係を研究しています。
韓国の遺跡からは、日本から海を渡ったとみられる「倭系遺物」と呼ばれる考古資料が出土しています。たとえば、3世紀後半の古墳時代前期に朝鮮半島南部にあった加耶諸国の1つ、金官国の王墓からは「ヤマト王権の中枢(近畿地方)で作られたモノ」が出土しました。これは、弥生時代までの遺跡から出土した「九州北部で作られたモノ」とは異なります。このことから、古墳時代になると朝鮮半島と交流する窓口が九州からヤマト王権へ移り、両地域の関係性が大きく変化したことがわかります。
最近は「渡来人」に関する研究も進めています。注目しているのは、かんざしや腕輪などの金属製アクセサリーや、カマドや甑(こしき:米を蒸す道具)のミニチュア品です。これらは通常、日本の古墳には見られない副葬品であり、渡来人と関連しています。これらの資料は、奈良盆地南部の古墳に集中しており、この地域に渡来人が住んでいたことを示しています。彼らが古墳時代や飛鳥時代の社会にどのような影響を与え、どんな役割を果たしたかを明らかにしようとしています。
中国との関係はわかっても、朝鮮との関係は謎だった
私は大学生の頃から古墳時代の研究を志し、奈良県の大型前方後円墳の発掘調査にアルバイトで参加していました。当時、邪馬台国やヤマト王権と中国王朝との関係は、文献史料や三角縁神獣鏡などを通じて研究が進められていましたが、すぐ隣の朝鮮半島諸国との関係はよくわかっていませんでした。そこで、現地の考古学に直接アクセスして、加耶諸国や新羅、百済のことを知りたいと思ったのが、現在の研究を始めたきっかけです。
考古学は遺物や遺構をもとに研究を進めるため、野外調査(フィールドワーク)や出土資料の観察が欠かせません。自ら計画を立て、自分の手で掘り起こした資料から歴史を復元していくことは本当に楽しく、やりがいのある作業です。また、発掘は何が見つかるかをある程度予測しながら進めますが、ときには思いがけない発見もあり、つねに面白さと緊張感の連続です。特にヤマト王権が朝鮮半島の諸勢力とどのような関係にあったか、というテーマは、文献史料には残されていない歴史です。それを韓国で見つかった倭系の考古資料から描き出せることに、研究の面白さを感じています。
AIにはできない「未知の探求」を
皆さんの身近にあるAIは「既知」をまとめるのは得意ですが、「未知」を探究することは人間にしかできません。学問の世界はコストやタイムパフォーマンスとは違う次元にあり、一見無駄に思えることにも意味があります。すぐ結果が出なくても「まあいいか」と思える楽観的な思考、柔軟な発想力や考え抜く粘り強さをもった、知的好奇心あふれる学生をお待ちしています。その好奇心を広げるためにも、高校時代は興味をもった本をいろいろ読んでみてください。私自身も吉川英治や山岡荘八の歴史小説をよく読み、教科書とは違う世界を知ることができました。また、高校での学習内容も後々役立ちます。たとえば考古学の測量調査における斜距離の計算には数学で習う三平方の定理が使われていますし、発掘で必要となる地質や岩石の知識も高校の学習が基礎です。入試では主に、大学側が「知っておいてほしい知識」が問われます。受験勉強は合格のためだけでなく、入学後の学びに必要な基礎を身につける期間と考え、しっかり取り組んでほしいと思います。
井上先生からのメッセージ
受験期は、成績が上がらず苦しいときもあるかもしれませんが、最後まであきらめずに努力を続けてください。ときには息抜きとして、博物館や美術館に足を運んでみるのも良いかもしれません。
大学での学びや研究は、自分の好きなことを好きなだけできるという点で、高校までの勉強とは大きく異なります。ぜひ、関西大学で発掘調査をしてみませんか?自分の手で掘り起こす考古学の面白さを、直接体験することができます。ヤマト王権の中枢や古代の都があった関西は、関連する遺跡や出土資料も多く、研究するうえで素晴らしい環境といえます。ぜひ一緒に、歴史の謎を解き明かしましょう。









